78 反撃
〇まえの回のあらすじです。
『ユノとセレンが戦う』
カブトの効果は絶大だった。
水のなかでもスピードを失わず、猛追する魔法の破壊光線のなかには、消えることなくユノのあたまをかすめるものもある。
【覇王の冠】はそのたびに、装備者であるユノを、破魔の能力で庇護した。
ゆいいつ威力をころしきれないのは、余波による物理的な振動くらいで、それもまた水中にあっては微々たるもの。
ぶくぶくと池のなかで息をひそめ、肺のゆるすかぎりにかくれつづけるユノは、ようやく思い至った。
(そうか……。魔法では、セレンさんはボクを傷つけることなんてできやしない)
浮上する。
重くなったブーツで、ちからいっぱい水を蹴って。
(フローラは、あるていどの魔法は防げるって言ってた。けど、それってたぶん、おいそれと使えるような術じゃない)
【覇王の冠】を打ち破るほどの魔法が、どんなものなのかは知らない。
とはいえ、おそらくは【エクスカリバー】や、【霊樹の杖】と同格――または上回る加護を持つマジック・アイテムであれば、あるいはという予測がある。
池の面へと上昇していく。
朝の陽にたゆたう光のわだちを、怪光線が横切っていく。
ばちん!
音をたてて弾けたセレンの魔法。
ユノは腰のポーチから、風の魔力をまとった【魔石】を取り出した。
ちからをこめて、魔なる者の能力を解き放つ。
足元に空気が渦巻き、水面の外へとユノを押し出す。
ぼんッ!
【水盆の池】は盛大な飛沫をあげた。
弾丸のごとく飛び出した水の塊から、濡れねずみになったユノがあらわれる。
セレンは杖をかまえた。
彼女の予想は的中した。
ユノが、ポーチからジェムを掴み出し、無造作に投げつける。
「妖精である私に、魔法など……」
セレンは嘆息した。
妖精は魔法に精通した知恵者だ。
悠久の時を生きる彼ら彼女らに、つかの間しか生きられない生物のあつかう技など、おゆうぎも同然。
悲鳴のような轟音をあげて、赤や緑や黄の宝石は、風の刃や火の柱、大地の銛を顕現した。
セレンの展開した防御壁が、肉薄するケンランな魔術を、ことごとく打ち砕く。
「!」
火柱が消え、くずれる緋色の熱波から飛び出す一撃に、セレンは緑の目を見張った。
【霊樹の杖】をとっさに掲げる。
カあン!
逆袈裟に放たれた、エクスカリバーの剣尖に、セレンの杖が、宙を舞った。




