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【異世界転移】をやってみた《4》 ―旅のおわり―  作者: とり
 第4話 はじまりの庵(いおり)
61/82

 61 復讐や





   〇まえの回のあらすじです。

    『【キングボア】のまる()きができあがる』












『ぷぎー!!』

 ハルモニアのうでのなかで、だっこしていた()イノシシがさけんだ。

 あわてて金の小竜(こりゅう)はスギのうえから地面(じめん)へと降下(こうか)する。

 戦闘のあったところからはなれた場所(ばしょ)でおろすと、仔イノシシは、フローラの無防備(むぼうび)()なかに突進した。


 ハルモニアにならって木をよじよじ()りていたユノが、「あっ」と(おも)()もなく、ちいさなイノシシは、銀髪(ぎんぱつ)少女(しょうじょ)のヒザうらに激突する。

「ぬがあっ!」

 まぬけな声をあげて、フローラはくず()れた。

 ハルモニアの背なかから、もう一頭(いっとう)のイノシシがおりる。

 そちらもまた、子どもながらにパワーのある動きで、(おや)のかたきである少女のよこっ(ぱら)に突っ込んだ。


 どずん!

 二度(にど)不意(ふい)を突かれて、フローラはうずくまる。

 【リカバリー】の呪文(じゅもん)をつぶやいたようで、ようやくスギの木の()もとにおりてきたユノのまえで、少女のからだはあわいひかりにつつまれていた。


『ぷぎー!』

『ぷぎー!!』

 二頭(にとう)のちいさなキングボアは、(いか)りもあらわに跳びはねる。が、攻撃はさいしょの一撃(いちげき)ずつで、わめきながらも、少女からは距離(きょり)をあけていっていた。

 ()()げて、『死体』をとおりこして『食糧(しょくりょう)』となった(おや)何度(なんど)もふりかえりつつ、けっきょくは逃走に()()って、(はやし)のおくへと消えていく。


「くうっ……けっこーメンタルに来たわ」

「……」

 わき(ばら)()さえつつうめくフローラに、ユノはそばまで来て手を()した。

 フローラは少年(しょうねん)の手を取って立ちあがる。


「ねえ」

 ユノは、からだはすっかり回復しただろうに、弱気(よわき)なため息をつく少女(しょうじょ)に言った。

「どうやってさとに持っていくの?」

「えっちらおっちら引きずっていったりはしないわよ」

 トングラムはありそうな肉塊(にくかい)を見やるユノに、気を取りなおしてみせてからフローラは、ポーチから(あお)い石を取り出した。

 テレポート(よう)魔石(ジェム)だ。つかえば、最寄(もよ)りの(まち)まで飛ばしてくれる。


「さきに帰ってるわ。もし、なにか用事(ようじ)があったら、ハルの家をたずねてちょうだい」

「あの(おお)きな()だね?」

「ええ」

 今日のひるに、セレンと会った【霊樹(れいじゅ)(さと)中央(ちゅうおう)にそびえる巨大(きょだい)樹木(じゅもく)

 神話に出てくる世界樹(せかいじゅ)彷彿(ほうふつ)とさせるそれに、ハルモニアはもちろん、フローラも()んでいる。

「――って、よくかんがえたら、あんたはわたしに魔石(これ)の代金をせしめに来なきゃならないのよね」

 両肩(りょうかた)をすくめるフローラに、ユノは首を振った。(よこ)に。


「お(かね)はいらないよ。その代わり、聞いてほしいことがあるんだ。大事(だいじ)なことだから、リリコとのことがおちついてからはなしたいんだけど」

「……。あんたが『だいじ』って言うんだから、そーとーたいへんなことなんでしょうね」

 ふっとちいさく笑って、フローラはついさきほどつくった『キングボアのまる()き』に片手をあてた。

「わかったわ。あしたのおひる以降なら、いつでもどーぞ」

 ユノはうなずいた。


 (あお)い石は、フローラが(ねん)じるなり、かのじょのてのひらのうえで砕け散った。

 ひかりが生まれて、少女たちのすがたを瞬時(しゅんじ)に掻き消す。(こと)(げん)をつよくはじくような硬い()を最後に、フローラとイノシシをつつんだひかりは、一迅(いちじん)(かぜ)となって天へと(はし)った。


 【魔石(ジェム)】のテレポートは、原則(げんそく)的にひとつにつきひとり。アイテムであれば、重量(じゅうりょう)にもよるがつれていくことができる。

 しかし『意志あるもの』としての『生物』は、魔力(まりょく)への相互(そうご)干渉(かんしょう)がはたらくため、小ぶりなハルモニアでさえ、同行させることはできない。


「えーと」

 いきなり『知りあいの妹』とふたりきりになって、ユノは困惑(こんわく)した。

『ふぎゃー』

 ハルモニアはパタパタつばさをうごかして、ユノのまえからどこへともなく移動する。

 かのじょの()ばたいていった方角(ほうがく)から、【霊樹(れいじゅ)(さと)】へと帰るのだろうとユノは合点(がてん)した。


「……ボクも帰るか」

 なんだかつかれた。

 戦ったのは自分ではないのに、ひどい倦怠感(けんたいかん)が、ユノの全身に()ちていた。











      ()んでいただき、ありがとうございました。






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