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【異世界転移】をやってみた《4》 ―旅のおわり―  作者: とり
 第4話 はじまりの庵(いおり)
54/82

 54 ※知らない人についていっちゃいけません


   〇まえの回のあらすじです。


    『ユノとフローラが、狩りのために【はじまりの(いおり)】をあとにする』






   〇



 (べに)色のひかり()す森は、【霊樹(れいじゅ)(さと)】の近辺にあった広葉樹(こうようじゅ)とはちがい、裸子植物らししょくぶつの樹々が天高くそびえ()(しげ)(はやし)だった。

「この日差しは魔力(まりょく)による錯覚(さっかく)なのよ。【時間】の区切りがないのは不便だからって、何代(なんだい)もまえのまえの族長(ぞくちょう)が、半日(はんにち)を区別しやすいように波長(はちょう)をいじったんだって」


 というフローラの説明に、「ふうん」と気のない返事をするユノ。

「それより、きみの『先生』のこと、聞きたいんだけど」

 もっと言うと、ユノはフローラの先生についてではなく、フローラ自身のことを知りたかった。


 精霊(せいれい)巫女(みこ)として生まれたかのじょが、どういう気持ちで生きてきたのか。

 王家(おうけ)第二(だいに)王女(おうじょ)であるかのじょだが、なんとなし、城に寄りつこうとしない気配があるが、それはなぜなのか。

 まだユノとパーティを組んで旅をしていたとき、フローラは【勇者(ゆうしゃ)】としてのちから――【選定(せんてい)(けん)】を持てあますユノに、こう言ったことがある。



 『どんな経緯(けいい)であろうと、『特別』になった時点(じてん)でそいつはチカラを振り回さなきゃならないのよ。そのおもみに()えかねて、自分がつぶれることになってもね』



 かのじょの真意(しんい)について、ユノはなにも分からないでいた。

 ただ、フローラはそう()らざるを得なかったのだろうか。という(おも)いがあるだけで。

「わたしの先生はね――」

 肩車(かたぐるま)したハルモニアの(あし)を、チョコチョコ()いてはバシバシ(あたま)をたたかれながら、フローラはうしろのユノに話す。


「なんか変わったひとだったわね。すんごい頭もよくって、魔法(まほう)技術(ぎじゅつ)も高かったのに、昼間(ひるま)っからそのへんフラフラしててさ。仕事って持ってなかったんじゃないかしら」

「えっ。だって、きみ学校に行ってたんでしょ? (ほう)学部(がくぶ)にいたって、お(ねえ)さんは言ってたじゃないか」

「いるにはいたわよ。でも、ほっとんど授業に顔出してなかったの。先生の家に入りびたりで、どっちかってーとそっちで(りん)()(がく)とか(ろん)()学は(まな)んだのよ」

「……。その先生とは、どうやって知りあったわけ?」

「んー。姉上(あねうえ)とケンカして、(ちち)(おう)に用意されてたお屋敷(やしき)を飛びだしてったときにね。もう帰らないつもりで町を歩いてたらさ、夜になっちゃって。とほうにくれてたら声をかけられたわけよ、そのひとに」

「なんて?」

「『ヒマならうちの掃除てつだってくれない? お小遣(こづか)いあげるから』って」

「絶対ついてったらヤバイひとのセリフじゃないか!」

「人を()()はあるわよ。昔ももちろん、今もね。第一(だいいち)、そのひと、(おんな)のひとだったし」

「でもあぶないよ。よく無事だったね」

「だーかーら、ちゃんとひとは選んでるっつーの」


 ユノの心配をよそに、フローラは()(いき)をした。

「古代語の文法(ぶんぽう)幾何(きか)(くすり)のつくりかたや【()(せき)】のつかいかた……いろいろ(おし)えてくれたなあ。メルクリウス以外にも世界があるってことを知ったのも、あのひとの(いえ)でだった」


 当時をなつかしむようにフローラのくちもとが微笑(びしょう)する。

「わたしが(ハル)をさがしに旅に出たいって言ったら、冒険(ぼうけん)に役立つスキルも仕込んでくれたわね。ピッキングとか、偽名(ぎめい)つかうこととか」

(よけーなこと(おし)えてくれたよなあ)


 だんだん(ろく)でもなくなっていく指導(しどう)内容(ないよう)に、ユノは少女のうしろで肩を落とした。

 なお、フローラがかつていたという都市は、現在内紛(ないふん)本拠地(ほんきょち)となっており、町のある(りょう)への関所(せきしょ)は閉ざされ、なかから出ることも、(そと)からはいることもできなくなっている。

 どこからかそうした(はなし)を仕入れてきたらしいフローラは、ゆるく(かぶり)を振るった。


(いま)はどこもかしこも、なんかややっこしいことになってるみたいだけどさ。まーあの先生なら大丈夫(だいじょうぶ)よね。殺しても死ななそうなひとだったし」

「そう?」

 ユノはこれ以上立()()ったことを()かなかった。

 セレンには言わなかったことを、フローラに伝えようか。


 かれの意識は、自分の予定のほうにかたむていた。

 ひたいの()(かざ)りに()れる。【覇王(はおう)(かんむり)】。

(これがあれば)

 魔法(まほう)による攻撃をことごとく()つというマジック・アイテム。

(ボクは、セレンさんに勝てるかもしれない)






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