52 冠を戴く
〇まえの回のあらすじです。
『フローラがユノに【魔石】を売ってもらうようたのむ』
(フローラにも、なにかを『憂う』って気持ちがあるのかな)
あかね色のせまい部屋のなかで、わずかに睫毛の陰影をまとう少女の青い(あおい)瞳に、ユノはふとそんな『感傷』めいたものをいだく。
フローラはガラガラとユノのカバンをあさった。
黒や緑、空色の【魔石】を、つぎつぎに引っぱり出す。
「これとこれと……これももらっていこうかしら」
(……やっぱ気のせいか)
夕日の色が、ユノをちょっぴりセンチメンタルにさせていただけのようだった。
「あっ、なによこれ」
ぐちゃぐちゃに掻きまわしてしまったために、カバンの奥底に追いやってしまっていた『もの』にフローラは今やっと気がついた。
つかみ出したのは、金色の宝玉。ユノがかのじょに正体を訊こうとしていたアイテムだ。
(知っていればいいけど)
あさっての方角をむいてくちの端を引きつらせるユノ。
こちらが問うまでもなく、フローラの手がのびてきて、そこにつかんだ宝玉をかれの黒いまえがみにかくれたひたいに当てがった。
「なーんでこんないいものを装備してないのよ。もったいなーい」
キュウンッ!
宝玉がユノのおでこの中心に触れ、音をたてる。
金色の光沢が、一瞬まばゆい閃光を発した。
鳥が両翼をひろげるように、珠の左右から金属のフレームをのばす。それはユノのひたいをグルリとかこみ、後頭部でカチンと連結した。
円環状のカブト。
「えッ!?」
あたまにのしかかる心地よい金属の重みに、ユノはギョッとした。目のまえの少女にわめく。
「これ……! フローラ、どういうものか知ってたの?」
「あったりまえでしょ。わたしをだれだと思ってんのよ」
1・おひめさま。
2・冒険者。
3・ドロボウ。
(……どれにしようかな)
ユノはこたえにまよった。すると横合いから、ハルモニアが飛んでくる。
「ぎゃっ、ぎゃあ」
「あら、ハル。あんたもこれがほしいの?」
やって来た黄金のちいさな竜を抱きとめて、フローラは四つのツノの生えたあたまを撫でてやる。
「じゃ、つけてすぐでなんだけど、はずしてもらいましょうか」
「いっ、イヤだよ。ボクのだもん。ってゆーか、これはいったいなんなのさ」
「……ハルが悲しそうなかおをしているわ……」
「ボクのはなしを聞いてよっ。だいたい、ハルモニアには代わりにヘンな種をあげたんだから、それでチャラでしょ」
「ふぎゃあ」
こういうときだけあまえた声を出してすがりついてくるハルモニアに、ここぞとばかりにフローラは抱っこしてあまやかしながら。
「わーかった。じゃあ教えてあげるわよ。あんたのつけているソレは、【覇王の冠】。超ド級の【マジック・アイテム】よ」
「覇王? 超ド級?」
まぬけにくちをぱくぱくさせて聞きかえすユノに、フローラは妹のあたまにアゴを置いて、「そうそう」と目をほそめた。




