51 魔石の交換
〇まえの回のあらすじです。
『ユノがフローラから食べものをもらった』
『狩りに行くついでに寄っただけ』とのたまう少女に、どう切りだしたものかまよったが、数秒の逡巡のすえに、ユノは正直に訊くことにした。
「それで……ボクが起きるまで、フローラは待ってたの?」
「ええ」
半身をひねってイスの背もたれに左腕をひっかけた体勢で、フローラは臆面なくこたえる。
訊いたユノのほうが気恥ずかしくなった。
もうすこし、つっこんでたずねてみる。
「なんで?」
「【魔石】を売ってもらおうかと思ってね」
「ジェムを?」
ピョイとイスから降りて、床にほうり出してあるユノの肩かけカバンをフローラがあける。
ユノもあわてて寝台から飛びおりて、フローラのそばにしゃがみ込んだ。勝手に盗っていかれないように見張る。かのじょには前科があるのだ。
「うーん、やっぱりわたしの見立てたとおり、いっぱい溜め込んでてくれたわねー」
「きみのためじゃないよ」
「わーかってるって。例の『使いたくない』病でしょ?」
「……それだけじゃなくってさ」
「ほかにまだなんかあんの?」
カバンから両手いっぱいに【魔石】をつかみ出して、赤や黄の宝石が手と手のすきまからこぼれ落ちるのをそのままに、フローラはユノの横顔を注視した。
「うん」とユノは首肯する。
「換金は、するつもりだったんだ。でも、王都をはなれてからは、ひとのいる町がほとんどなくって」
「ひとが?」
「……廃墟になってたんだ。【冒険者ギルド】も、機能していないところが多かった。モンスターに襲われたってだけじゃなくって、『教会』の弾圧がひどくなっているっていうのもある」
「【竜神教】か。連中もなかなかメイワクなことしてくれるわね」
てのひらにあまっていたいくつかの魔力の石を、ザラーッとユノのカバンにかえして、フローラはまぶたを伏せる。