49 恥じらう乙女(男)
〇まえの回のあらすじです。
『セレンが【ユノ】への不安をくちにする』
〇
斜陽が円型の窓を射貫いていた。
うすく赤金色のかかった白いひかりは、しかし『日没』をむかえることがない。
便宜的に妖精の世界ぜんたいに充ちる『魔力』によって染色された日光は、もうあと数刻もすればふたたび午のあかるさを取りもどす。
だからいまが正確に何時なのかを知るすべは、ここにはなかった。
あかい部屋のなかでユノは目をさます。
ちょっとからだをやすめるだけのつもりだったのが、ぐっすりねむりこんでしまっていた。
夕刻の色をみとめて、ベッドから跳ね起きる。
「ゆうがた……!? 寝過ごした!」
「どっかに行く用事でもあったの?」
声がして、とっさにユノは布団のシーツを自分のからだにあてた。べつに裸だったわけではないのだが、反射的に出た行動だった。
「あんたは『恥じらう乙女』かってのよ……」
ベッドから半メートルほどのところにあるテーブルに、銀髪の少女と金の小竜がいる。
少女は日中に見たときの白い装束ではなく、かつて【冒険者】として活動していたときに着ていた、【ミスリル】の胸当てにハーフパンツ、腰にレイピアを佩いたルックスだった。
かのじょ――フローラは木製のイスに、背もたれをまえにして座っていた。
おおよそ『王女』らしくない姿勢だが、「こっちのほうがかのじょらしい」とユノは思った。