45 メルクリウス
〇まえの回のあらすじです。
『竜とかのなりたち』
「分かる?」
はなし終えたリリコは、半身を捻ってうしろを見た。
うっそうとしていながら、それでも、日射しに森閑と映える樹林の道で、妖精の少女のかんばせは妙なるしらべのごとく、うつし世から隔てられた美しさにかがやいていた。
問われたユノは、かのじょの唐突な可憐さに息をのんだ。
なまいきな態度のためにすっかり失念していた。
リリコは光妖精なのだ。
非の打ちどころのない相貌に、いまさらながら打ちのめされる。
答えないユノに、しびれを切らす。
嘆息して、リリコはまえにむきなおった。止めていた足をすすませる。
「ようするに、あなたたち『人間』という種属は、邪なだけで、なんの価値もない、邪魔な存在だということよ」
よく分かった。
さっきのどきりとした高鳴りが失せた。
ユノは無感情に「うん」とうなずく。
「よく分かったよ。メルクリウスが、そんなどうしようもない人間ですら、生きることをみとめてくれたんだってことが」
ざッ。
リリコの足が、今度は意志をともなって停止した。
自制心をわすれた、反射的な運動だった。
リリコはユノを睨んでいた。
「ふんっ」
そっぽをむいて、かのじょは傲然と歩きだした。




