表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/82

 38 世界はそうやって回っている






   〇まえの回のあらすじです。

   『ユノが自分のたくらみを【セレン】にはなそうかまよう』










   〇



 【妖精ようせいの世界】は神聖だ。きよらかでけがれがなく、まちがいもかなしみもない。

 それをして【妖精】たちは人間を『下等』とみなす。単に利己りこ的というだけならいざ知らず、自分の『無能むのう』のせきにんを他者になすりつけ、あまつさえ『肩代かたがわり』してくれたものにたいして、なんの感謝もしないばかりかりずに『しつけつづける』という点において。

 だからかれらかのじょたちは、まず人間の来訪らいほうをかんげいしない。特に【人間の世界】と絶縁状態(じょうたい)になってからは。

 もとよりなかのよい種族しゅぞくではなかったが、両者りょうしゃのあいだに明白めいはくな被害・加害のかんけいがしょうじてしまってからは、この「隔絶かくぜつ」という処置しょちは、英断以前にまっとう。あたりまえの措置そちだった。

 ただ、【さと】の住民じゅうみんの人間にたいする嫌悪けんおねんにかんしては、べつだん歴史的な事情じじょうをさしはさまない――『火にあぶらをそそいだ』ということはあったとしても――。もとからである。こればかりはもう、さいしょっから『ウマがわない』。というていどのものでしかない。

 あえて言及げんきゅうするなら、この『き』『きらい』の感情かんじょうについて、ひととそれ以外のしゅとのあいだにはおおきな解釈のちがいがある。


 【妖精ようせい】たちにとっては不思議なことに、人間の大多数だいたすうが、「だれかにきらわれる」という現象げんしょうについて、その原因として「なにかきらわれるようなことをしただろうか」と考えるのである。これは片腹かたはらいたいと言わざるをえない。

 なにもしなければ、「自分はかれてとうぜんのごりっぱな存在だ」と豪語ごうごしているのだから。

 また逆に、人間は「あいてにとってよいことをすれば、かれる」とかんちがいしやす生きものであるともいえる。とうぜん、そこまで単純たんじゅんな思考回路をしているひとなどかぞえるほどでしかないと信じたいところだが……。

 ようするに。おおいなる前提として、「自分には他者に好意を持ってもらえる価値がある」。「だれかからきらわれるのは、やりかたがまずいだけで、上手じょうずにあいてとやり取りすれば、なんらかの好意を持ってもらえる」。「いや。そこまではいかずとも、きらわれるということはないだろう」。「もし、自分がなにもわるいことをしていないのに、あいてがきらってくるとすれば、それはあいての『精神性』にもんだいがあるということで、あいてのその感情かんじょうはこちらの対応たいおうによって『矯正きょうせい』すべき『不当な反応はんのう』である」――。

 言いえれば。


 だれかが自分を「きらう」ということを。

 そんな、だれにでもあってしかるべきとうぜんの権利を。

 大多数だいたすうの人間がみとめていないのだ。

 方法論ほうほうろんでひとの気持ちは左右さゆうできない。

 そんなかんたんなことも受け入れられず、あとづけの理屈であたかも自分の意のままに他者がうごいているかのように振るまう連中れんちゅうはばを利かせている種族しゅぞくだからこそ、【妖精ようせい】や【魔族まぞく】は人間が気色きしょくわるいのだ。

 『自己』というものを、明確めいかくに世界の中心ちゅうしんにすえたとき。『他者』というのはおのれの意のままにうごいている『傀儡かいらい』や『機械』や『人形にんぎょう』――ではない。

 彼らもまた自分とおなじように『意志』があり、ときに『個』をおさえてこちらのわがままを聞き入れて、あるていどのがまんをして、こちらの『利己性』をみとめ、あるいはゆるしてくれて、そのうえでときにをけずるような『痛み』をともないながら、こちらのためになるように、うごいてくれているのだ。


   『世界』はそうやってまわっている。


 にもかかわらず、手がらだけをかすめとり、ひとの寛容かんようにつけこんで服従ふくじゅういるやからのなんとおおいことか。

 かれらの性質をおもえばこそ、【妖精ようせい】たちはかれらかのじょらの訪問ほうもんにまゆをひそめ、しろいをむけ、はなつまみものとしてかかわるのを忌避きひする。

 セレンにあいさつをしたあと――大樹たいじゅ巨大きょだいなうろから出た『人間ユノ』にあびせられるのは、【ホビット】や【ドワーフ】、【アールヴ】たちの、そんなてついた視線だった。

 【霊樹れいじゅさと】に来たときから、遠目とおめからげかけられていたものだ。

 異界からの【勇者ゆうしゃ】であろうと、【魔王まおう】をたおした『英雄えいゆう』だろうと、そんなことはかんけいないのだ。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ