31 おっことした
〇前回のあらすじです
『【ハルモニア】のすっとぼけが通用しなかった』
「【苗】はどこにいっちゃったのかしら」
ふてくされつづけるい妹をかかえたままフローラはうめいた。
パンドラも首をひねって、そこかしこを見まわしている。「そのへんに置いてあるのでは」と考えたのだ。
どうやらこのふたりの少女。【霊樹の苗】とやらをさがしていて、ユノとハルモニアがいっしょにいるところを偶然みつけたらしかった。
不意打ちをくらって痛い目をみせられたユノにはたまったものではなかったが。
「あのさ」
この際うらみごとはあとまわしにしてフローラに言う。
「ボク、こっち(妖精の世界)に来るまえに【バーライル】の町を通ったんだけど。その時に空から植木鉢がふってきて。『誰もいなかったのに変だなあ』とは思ったんだけど」
「うーん。ハルが落っことしたのかも」
「そんなに軽くながさないでよ。ぶつかってたら即死だったんだろうからさあ」
「ごめんごめん。それで? 鉢はどうなったのよ」
むくれるユノにフローラはつづきをうながした。
「砕け散った。だって地面にぶつかったんだもん。なかみもぐちゃぐちゃだったよ。土がばらけて、植えられたものもひしゃげてた。ボクが感じた限りでは、なにかの『芽』か、『苗』があったようにみえたんだけど」
「たよりない意見だけど。それが一番有力みたいね」
「霊樹の苗はつぶれちゃったってこと?」
パンドラがそでを引いて訊いて、フローラはうなずいた。