3 この世界を変えるために
・前回のあらすじです。
『ユノが【バーライル】という町にやってくるが、そこはゴーストタウンになっていた』
【冒険者ギルド】にはだれもいなかった。荒らされているということはなく、唐突に人がいなくなったという、整然としたがらんどう。
ここではたらいていた人たちが、逃げだしたのか、殺されたのか。ユノにはわからなかったが、ひとつの『組織』として機能していないということだけは理解した。
受けつけカウンターを通りすぎ、奥まったところにある、冒険者たちの待機場に来る。
かんたんな食事ができるよう、大テーブルと粗末な椅子がならんだ部屋のかべには、【掲示板】があった。そこにはなにも貼られていない。通常なら、コルクボードには町人からのこまごまとした仕事や、モンスター退治の依頼などが、ちいさな紙片に書いてはりだされているのだが。
職員がはずしていったのか。かたむいたボードには、一枚もピン留めされていない。
ギルド内が無人であるのだけをたしかめて、ユノは建物をあとにする。これ以上、この施設にとどまっていてもしかたがない。宿屋に泊まって、あしたにそなえることにした。もっとも、その宿屋さえ、店主がいることは期待できないけれど。
――ここから山を越えたところにある、【パペルの塔】。
天をつくばかりに高い建造物のその頂きに、【妖精】のすむ場所――【霊樹の里】へ、旅人をいざなう光の【柱】がある。
ユノは【霊樹の里】へいくつもりだった。そこにいるという、【金の竜】に会うのだ。
なぜ、この世界――【メルクリウス】において、「善の神」ともよばれる彼女に会いたいのか。うまく説明することは、ユノ本人にもできない。ただ、確証のようなものがほしかった。
この世界を、変えるために。