27 こらああああ
〇前回のあらすじです。
『【金のドラゴン】がユノからもらった【種】を植える』
「こらああああ!」
突如として聞こえたおたけびに、ユノはぎくりと肩をはねさせた。
「こらあ」なんていう人はひさしぶりだった。
ガケのしたをたしかめると、銀髪の少女が立っている。
フローラだ。
かつてすこしのあいだだけ【パーティ】を組み、ともに旅をした女剣士。そのときは【ローラン】と名乗っていて、ユノが彼女の本名を知ったのはそれよりあと。
ユノとしては【ローラン】のほうが親しみやすくてよいのだが。「本名で呼ぶのが礼儀だろう」と合点して、ローランと言いたいのをグッとこらえている。
「フローラ王女。どうし――」
フローラは青い目をつりあげていた。それは遠目にもわかる気迫をまとっていた。
彼女の手には緑の石がにぎられている。魔法の石。【ジェム】だ。彼女はそれを握りこむ。
【風の魔法】が発動する。
「このっ。ひとさらいー!」
フローラは旋風に乗って飛びあがった。
ちいさな竜巻が、しろい長衣のおとめを地上から数メートル高いところへ一瞬で飛翔させる。
『ひとさらい』。
と身におぼえのない誹りを受けて、ユノは「ええっ」と目をまるくする。
弁解しようとフローラを見あげる。
ときすでにおそし。
見あげたユノの顔面に、上空からの飛び蹴りが炸裂した。
どさあッ。
ユノはガケのうえに倒れる。
ちかくでは金の小竜が、『種』を植えたところにすわりこんで、ふたりのやりとりをみつめている。