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【異世界転移】をやってみた《4》 ―旅のおわり―  作者: とり
 第2話 セレンのなくしもの
19/82

 19 パペルの塔より





   ・まえの回のあらすじです。

   『【霊樹れいじゅ苗木なえぎ】がなくなる』










   〇


 砂塵さじんの荒野をぬけて、に建つ塔へいたる。

 不用意ふよういに世界の【さけめ】に触れたため、よじれて破壊はかいされた手は、回復のちからを秘めた【魔石ジェム】をつかうと、またたくまに修繕しゅうぜんされた。

 暗い空のしたから、階段をのぼって塔のいりぐちに立つ。

 かつて、【精霊の巫女みこ】によってあけられた扉は、門番もんばんをうしなったためかひらいたままになっていた。なかに巣食すくっていたモンスターたちもいない。

 もう幾年いくとせもなにものもおらず、わすれさられてしまった廃墟はいきょのように、天を突くばかりに高い塔――【パペルの塔】は、森閑しんかんとたたずんでいた。

 円筒形の建物の、内壁ないへきにそってうおんぼろの階段を、ユノはあるいた。

 上へ。上へ。

 らせんじょうの石段を、ふみぬいてしまわないように。慎重しんちょうにのぼっていく。

 みちはながい。

 塔に来たときには午前だったのが、ひるとなり、上階じょうかいてたホールで食事しょくじ休憩きゅうけいを取った。

 ふたたびいただきめざして移動する。そこに妖精ようせいくにへつながる【はしら】はある。


 あなぼこだらけの塔をのぼり、てっぺんへと着いたのは、その日の夕刻ゆうこくだった。

 もうよるもちかいのは、やぶれた外壁のそとにせまる東の群青ぐんじょうからわかる。

 頂上ちょうじょうにただよう、あえかなほたるのあかりに、ユノは視線をめぐらせた。

 扉のあいた広間ひろまから、ちいさな光輝こうきはながれてきている。

 光のはしらが、祭壇さいだん中心ちゅうしんから上空じょうくうへとのびている。

(このさきに、セレンさんたちのむ世界がある)

 一歩いっぽあしをユノは踏みだした。ズボンのポケットのなかで、【ファブール】からもらった黄金おうごんのかざりを握りしめる。

 つかいかたはわからないし、この宝玉ほうぎょくがなんなのか正体しょうたい不明ふめいだった。だがユノにはなにか神聖な、「おまもり」のようなものにおもえた。

 祭壇へとのぼる。

 光の柱に、飛びこむ。

 ふっ。

 と全身が浮きあがる感覚。

 ここちよいぬくもりにつつまれる。

 白い輝きのなかで、ユノの全身は消失しょうしつした。

 なにごともなかったように、光の柱はあいかわらず静謐せいひつにたたずんで、塔はやがて、よるをむかえた。






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