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【異世界転移】をやってみた《4》 ―旅のおわり―  作者: とり
 第2話 セレンのなくしもの
17/82

 17 しっちゃかめっちゃか





   ・まえの回のあらすじです。

    『ユノが三頭の【サラマンデル】を【魔界まかい】にかえす』











「ハルっ。ハルッ」

 少女しょうじょのわめく声がする。

「ハああルーーーー!!」

 森のみどりと原始的な高床たかゆか式の住居じゅうきょ群にかこまれた、【妖精ようせい】たちの場所ばしょ――【霊樹れいじゅの里】。

 中央ちゅうおうにそびえる、天をつらぬくばかりに巨大きょだいな【樹】は、善良ぜんりょうのちからをつかさどる【ドラゴン】の家であり、城である。

 一年いちねんをとおしてれわたり、ひる太陽たいよう黄金おうごんよるは月の白銀はくぎんにあかるい天然木てんねんぼく集落しゅうらくは、なにも知らぬ住民じゅうみんたちできょうもへいわだった。


 さわいでいるのは、少女ひとりである。

 銀色のおかっぱに、やすっぽいはなかみかざりをつけた、あどけないおもざしの少女。シルクの長衣ちょういと木のつると皮でんだ『グラディウスサンダル』といった質素な服装は、小柄でほそみの彼女かのじょのすがたを浮世うきよばなれした可憐さにせてくれる。

 もとよりあいらしい少女であり、あおひとみ気丈きじょうであると同時に『わがまま』な輝きをともすものの、しぐさのひとつひとつには、王侯おうこう貴族特有(とくゆう)の、一朝一夕いっちょういっせきではにつかない、染みついた気品がただよっている。

 【ペンドラゴン王家おうけ】の第二王女だいにおうじょ、【フローラ・エル・ペンドラゴン】である。彼女は大樹たいじゅのウロで、さがしものをしていた。

 ドラゴンのねどこであるクッションはしっちゃかめっちゃか。

 なかわたがわりの羽毛が、土の地面にばかみたいに散らばっている。引きだしやタンスもあらかたひっくりかえり、おくへつづく扉はあけはなたれて、プランプランとちょうつがいをきしませていた。


 少女しょうじょ――フローラは、ジャガイモやニンジンを保存ほぞんしているカゴをさかさまにした。

 だれもかくれていないのをみとめると、またさけんだ。

「ハルーーーーっ!!!」

「なにをさっきからさわいでいるの。フローラ」

 つるのとばりをくぐって、ひとりのおんながはいってくる。

 みどり系統のながいかみに、同色どうしょく双眸そうぼう。うつくしいかおをしているが、それは生命せいめいのあるものにられる『愛嬌あいきょう』をまとったものではなく、理想だけをつめこんだような、石の像めいた『つめたさ』と『無機質むきしつさ』で構成されている。

 なんのこだわりか、衣装いしょうのドレスも若葉わかばの色で統一とういつしたこのうつくしくわかい女妖精おんなようせいは、ここ【霊樹れいじゅの里】をおさめる族長ぞくちょう、セレンであった。






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