15 敵同士
・前回のあらすじです。
『エクスカリバーは、【勇者】にしかつかえない』
ヨルムンの目くばせを受けて、ユノは動いた。山道に刺さったままのエクスカリバーを摑み、引き抜く。
雲のうすい面からかろうじてとどく陽光を照りかえして、刀身は星屑のごとく輝いていた。
「シャン……」と鈴めいた音をたてて、土のなかから刃が外気のなかをのぼる。
「やってみるけど」
ユノはいちまつの不安を感じて、空間の裂け目にとらわれているファブールを見た。
「もし失敗して、この【サラマンデル】が死んでしまっただけに終わっても、うらまないでよ?」
「なあに、そのときはもと通り、オレたちとおまえは『敵同士』になるだけだ」
「死にたくない、死にたくない!」
わめく仲間をよそに、ヨルムンは気がるに言っただけだった。横ではニドヘーグが固唾をのんで、自分のリーダーの言葉がほんきかどうかをうかがっている。
ユノは剣を構えた。ここまでコミュニケーションを取ってしまったあいてと、ふたたび戦う気はないが、もしもそうなってしまったらしかたがない。
この諦念について、強く抵抗する意志や、冷静に自分をたしなめる気概を、ユノは放棄していた。
なにが言えるというのだろう。
いまさら。




