第1章 第6話
それにしても、一戸建ての我が家に留学生とは…
否、
一戸建てだからこその受け入れなのかも知れないね。だって普通のマンションに異国の若者と一緒に生活なんて、普通考えられないよね、有り得ないよね…
と、僕はもう一人の僕に問いかける。
ーそうよね。パパの会社の人で広い一戸建てに住んでいる社員が少ないから仕方ないのよ。ここは黙って受け入れるしか、ないわね−
因みに、もう一人の僕、はちょっとツンデレの女子設定だ。名前は僕の名の満からとって、満子。決して音読みしてはならない。それは彼女に対してのエチケットってやつだ。
この事実は死ぬまで公表することはないだろう。でも恐らく、他の皆も似たようなもんなんじゃないかな。聞いてみたことすらないんだけれど。ほら、よく道端で歩きながらブツブツ喋ってるやつ。きっと彼乃至彼女も心の中のもう一人の自分と会話しているんだよ、そうだよな、ミッチ?
ー間違いないわね。でもよく人前であんなこと… ワタクシには信じられなくてよ−
そうだね、僕にも信じ難い光景さ。二人の認識は如是ピッタリと一致する。それが何より心地良いので、いつまで経ってもヤメられない。これは皆同じに違いない。
其れはさておき。
その何人かも分からない海外留学生が我が家に来た暁には、ミッチとの愉快な会話は控えめにせざるを得まい。少なくとも入浴中の会話は今後慎むことにしよう。
ああ、そんな留学生なんて来なければ良いのに。それも二年間も…
更なる絶望が、重たく僕にのしかかる。