第1章 第3話
絶望の元凶の根本理由のその二。教師のレベルの低さ。
僕は高一の二学期で理数系の道を諦めた。何故ならそれらを授業内容が余りに酷かったからだ。九九も危うい生徒など打ち捨てて先に進めば良いのに、授業はクラスの最もレベルの低い生徒に合わせて進められるのだ。
僕は二次関数を学びたかったのに、未だ二次方程式から先に進まない。慣性の法則を学びたいのに、物体(授業)は未だに静止状態を保っている。
こんな護送船団方式の授業が進められているうちに、僕の向上心は冷却曲線を描き始め、冬には遂に凝固点に達してしまい、理数系の勉強への興味がすっかり亡くなってしまった。
これは全て理数系の教師の怠慢によるものだ。僕から勉強への興味を失わせた彼等の責任はあまりにも重大である。
もし僕があの日高熱を出さずに、或いはあの日親に甘えずに自力で受験会場に向かっていたらー
きっと今頃、僕の理数系への興味は昇華していただろう。進学校の教師は進学校を卒業しAラン大学で学んだ方ばかりだ。それだけで尊敬に値し、彼等の口から出る金言を僕は一言も聞き漏らしはしなかっただろう。
先日、通っている塾の校内模試で、中学の同窓だった河辺某が県内で八位の成績を取っていた。彼は僕より成績が劣っていたにもかかわらず、僕の第二志望の県立高校に進んだのだった。間違いなくあの高校の素晴らしい授業の成果であろう。
ああ、僕があの高校に通っていたら、恐らく全国トップ100に入っていたのではないだろうかー そうすれば、Aランどころか特Aをも狙えたのではー
そんな夢想から覚め、手元の塾の模試の結果を眺める。そして大きな溜息を溢す。AランBランどころか、これでは… やはりFランからAランへのステップアップなぞ、叶わぬ夢なのだろうか…
こんな社会の底辺の臭いが染みてきた己への絶望から逃れる術を探る毎日に、僕は疲れ始めていた。