第3章 第4話
丁度家の玄関でパパとママと鉢合わせになる。
「ごめんねえー遅くなっちゃったーご飯食べてきたのー?」
(ママはウキウキだな。パパ頑張ったんだな)
僕はプッと吹き出す。
「ケーキ買ってきたからなあー 手洗ってから食べようねー」
(ほら。パパ、ヨロついてるじゃん)
僕はお腹が痛くなるほど笑ってしまう。
手を洗いダイニングに入る。パパとママの笑顔が凍り付くー
「ユートンちゃん… ねえ、どうしたのそのアザ…」
パパは真っ青な顔になる。
「喧嘩…いやいや、事故? おい満、何があった? 説明しろ」
一体、今日は何度修羅場を越えなければならないのだろう。
(どーするよ…)
(私に任せて、いい?)
(了解。合わせてみせる)
突如、ユートンがパパにしがみつき、
「ゴメンなさい、私が悪いんです!」
と叫び、涙を流し始める。
パパは硬直し、ママはオロオロし。
「ど、どうしたの。何があったの?」
「私が、あんな馬鹿なことを言ったから…ミツルを怒らせてしまったから…」
二人が僕を睨み付ける。あ、そゆこと? ま、いっか。
「…ちょっと、カッとなっちゃって…つい…」
パパが僕の胸ぐらを掴み、
「お前、殴ったのか? 女の子を、殴ったのか!」
「ゴメンなさい、でも… 仕方なかったんだよ…」
(で。この後どんな展開にすんだよ?)
(こんなんで、どお?)
「そうなのパパ。私が、私が…」
パパは息を潜めてユートンの鳴き声に耳を傾ける。ママはオロオロしながらパパの背中にしがみ付く。
「私が、「ヨハネってキモい」って言っちゃたんです… ゴメンなさい、なんて事を私…」
パパが凍り付く。次いでに僕も凍り付く。ママは首を傾げる。
そう。僕とパパは、隠れヨハネ推しだったのだ。
え? ヨハネって誰かって? こんな常識知らないの? 其れは流石に…
「それは… ちょっと…」
パパが口籠る。
「私が、あんなキモい子がスクールアイドルなんて、信じられない。有り得ないって、ミツルに言っちゃったんです。」
僕は怒りに身を震わせながら、
「そう。だからつい…気が付いたら、手が出てた…」
パパは口籠もりながら、
「満…ダメだ、何があっても… 何を言われようと…女の子に手をあげては… 例えヨハネを侮辱されてもだ…」
「…分かった。肝に銘じるよ。ユートン、済まなかった。僕を許してくれ…」
ユートンは頬を膨らませ、
「ヨハネ! ユートン言うな!」
パパと僕は一瞬何が起きたのか理解出来ずに凍り付く。三秒後に状況を認識し、
「「ぎゃはははははは」」
パパと僕はユートンにしがみ付く。
ママは呆れ果て、ケーキの準備に取り掛かる。




