第3章 第3話
僕はユートンを強く抱き締める。涙が溢れ出て止まらない。
ああ、やはり間違っていた。絞め殺されようが何をされようが、やはりコイツを置いて逃げ出した僕は間違えたのだった。
僕はユートンを抱え浴室に向かう。タオルを濡らし、顔の血を拭う。どうやら口元と鼻から出血している様だ。涙が止まらない。
ママがコーディした服は砂と血痕で惨たらしい有り様だ。僕の着ていた服と一緒に洗濯機に放り込み、洗剤のチューブも三つ放り込み、スタートボタンを押す。涙が溢れ出す。
下着姿のユートンに一人でシャワー浴びれるかと問うと、軽く頷く。浴室に入るユートンの後ろ姿を見て、僕は自室に戻る。嗚咽が止まらない。
何となく時計を眺めると、七時過ぎである。スマホにママからメッセージが入っているー
『ちょっと遅くなります、ユートンちゃんと二人で何処か食べに行ってくれる?』
『オッケー。ごゆっくり〜』
かなえちゃんからのメッセージを開く勇気と度胸は、僕には無かった。
何日ぶりだろう。
ドアが静かに開いていく。
口元にアザを作ったユートンが、ベットに突っ伏している僕を見下ろしているー
「腹、減ってないか?」
「うん。腹、減った。」
「ファミレス行く元気、あるか?」
弱々しく微笑み頷く。
僕らは二人、そっと家を出た。僕はユートンの右手をファミレスに着くまで離さなかった。
僕が唖然としている前で、ユートンはチキン竜田揚げとカルボナーラを貪る。因みに僕は、ざる蕎麦セット。其れも半分は残した。
そう言えば食べる時にくちゃくちゃ言わなくなったな。ただ口一杯に頬張るのは相変わらずなのだが。
口の傷が滲みるのか、時折眉間に皺が出来る。其れでもユートンは貪欲な食欲を隠そうともせずに、二皿を完食してのける。
「はー、食った食ったー ミツルはそれだけか?」
「まあな。それより、お前…」
「今何時? もう八時か。早く帰らなきゃ」
「お、おう…」
僕は会計を済ませ、ユートンを促し店を出る。
ユートンが当然の如く、右手を差し出す。
その手を僕はそっとしっかりと握る。
心なしか、帰り道をゆっくり歩く僕たちであるー




