第3章 第2話
シャワーを止め、タオルで体を拭く。全裸のまま階段を上がり、部屋に入りベッドに倒れ込む。イオンモールや海岸を三人で散策した事が昨日の出来事だった気がする。
僕は何と言う事をしてしまったのか。女子を、其れも遠い異国からやって来た女子を差し出し、自分だけのうのうと逃げ帰るなんて…
いや、あの子は産業スパイだ、パパを引きずり落とすために我が家に来た厄介者だから当然の報いだ。何なら今頃、何某とよろしく楽しんでいるかも知れないー
馬鹿を言うな。アイツは僕を助けにわざわざあの場に来たんじゃないか。なのに僕はアイツを置いて一人逃げ出したんだ。救われることに甘え、救うことを放棄したんだ。人として最低じゃないか。
あの場に来る方が悪い。それにアイツも僕に逃げろと合図していたじゃないか。あれはアイツが勝手にしたことであり、その責任は僕には無い。アイツの自己責任なんだ。
自己責任って何だよ! 其れじゃ逃げたことを正当化しているだけじゃないか。アイツは我が家に寄宿しているんだから、僕には保護監督責任があるんじゃないか。
其れなら何でこの数日間アイツを放置してたんだよ? 無視していたんだよ? 其れってかなえちゃんを取りアイツを切り捨てたってことなんだろ?
いや…其れは…
その通りだろ? あんな産業スパイのビッチより、初恋の子の方が僕には相応しいんだろ?
いや…其れは…
だから良いじゃないか。アイツを何某に差し出す。そして僕はかなえちゃんを命懸けで守る。良いじゃん、其れで。
いや…其れは…
じゃあ何だよ。僕はアイツの方が良いのか? 初恋のかなえちゃんより、年齢不詳のビッチの方が良いのかよ?
………
は? ちょっと待てよ。何だよ今の沈黙…
だから…僕は…
僕は、何だよ?
僕は…僕は…
玄関が開く音がする。ヒョウのように僕は跳ね起き階下に飛び降りる。
そこには、顔面血塗れのユートンが立ち尽くしていた…




