第1章 第2話
一年前の入学式。壇上の校長が顔を真っ赤にして、はしゃぎ騒ぎ暴れる新入生を怒鳴りつけるのを眺め、僕は高校生活の絶望を予感した。そしてその三分の一が過ぎ、僕の予感は概ね正しかった。
第一に。生徒のあまりにも低い民度。
授業中教師の話をまともに聞く生徒は10%程か。残りはスマホでSNS、ゲーム、漫画を読む、のどれかだ。
殆どの生徒の勉学に対する意識とは、したくもない勉強を卒業の為に渋々やらねばいけないもの、であろう。僕ら10%の生徒たちの様に、その先の大学受験を見据えて、と言う意識なぞ皆無である。
従って知識への関心も乏しく、世の中の動き、政治、経済に対する注目度はほぼゼロ。現内閣の大臣を三人言えたなら、僕は全裸で家まで帰る事に吝かでない。
彼らの関心は異性、化粧、ゲーム、SNS、動画再生など。どれもAラン大学に行くには全く不要なものばかりだ。そう彼等はこの十五、十六歳で残りの人生を諦めてしまったのだ。
Aラン、乃至はBランの大学に進み、少しでも条件の良い企業や自治体に勤め、人生をより豊かに過ごす、と言う事を諦め、将来を直視せず今さえ楽しめれば良い、欲を言えば半年先が楽しければ万々歳だ。そんなレベルの思考回路なのだ。
僕は彼等のそんな価値観を否定はしない。どうぞ今を大いに楽しんでください。そして高卒で就職でも何でもして、社会の底辺でもがき苦しんで下さいね。
僕は僕で運の無かった高校受験を忘れ、大学受験でAランクに這い上がれば良い。そして上の社会から彼等を見下ろそう。あ、でもその頃には彼等のことなど心の片隅にも思い出せないかもしれないな。
そう考え、一年生を過ごしたのだが… 未だ絶望の日々を過ごしている。