第1章 第1話
僕ほどついていない人生を過ごしてきた高校生はいないだろう。
生まれた時に臍の緒が首に絡まっていて、危うく誕生日が命日になるところだった。
二歳の頃、親戚が舐めても安全なドイツ製の木のおもちゃをくれたのだが、何故かノロウイルスに感染した。
幼稚園に入った頃、公園でシャツを泥まみれにした女子に自分が着ていたシャツを貸し与え、その結果上半身裸で家に帰り、近所の人に頭のおかしな子供認定を受けた。
小学生の高学年の頃。全校集会で全員でグランドに整列していた時。目の前の高田という奴が放屁した。そして不意に振り返り、
「あー、秋田くん、オナラしたー」
と騒ぎ立て、弁明するいとまもなくその日から『ガストン』と呼ばれた。
中学二年の時。国語の時間に前の机に座っている初恋の可愛い女子、湯沢かなえがシュッと可愛いオナラをした。その音は周囲には聞こえなかったのだが、何とも言い難い異臭が教室内に漂い始め、満場一致で僕がその異臭の元と特定されてしまい、『イシュー』と渾名された。
高校受験では本命の私立高校受験日に高熱を出してしまう。当然不戦敗。第二志望の県立高校受験日の日、試験会場まで親が車で送ってくれる途中で交通事故に遭い全治一週間の怪我。結果、第三希望、滑り止めの高校の受験資格さえ失った。
退院後、県立高校の二次募集でようやくペンを持つことが許され、数日後に入学も許された。
この春。中学の頃の僕ならなんでこんな高校に、という所謂Fラン高校の二年生になった。