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機械仕掛けの殲滅少女  作者: サンボン
第四章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 前編
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夜襲?

ご覧いただき、ありがとうございます!

すいません、ゲリラ投稿を敢行します!

「あ……アデル様……」

「え……?」


 そこには……暗がりの中、微笑みながら僕の顔を覗き込む、ソフィア様の顔があった。


 え? え? というか、何でソフィア様が僕の部屋に!?


 僕はガバっと慌てて身体を起こ……せない!?


「くふ……アデル様……アデル様あ……!」

「え!? ちょ!? ソフィア様!?」


 窓から覗く月明かりに照らされ、ソフィア様の恍惚の表情が浮かびあがる。

 こ、これ、ヤバイ!? ヤバイんだけど、ぼ、僕の身体がすごい力で押さえつけられて身動きできない!


「アデル様……このソフィア、あなたにどうしてもお願いしたいことがあるのです……」

「お、お願いしたいこと……?」


 し、深夜に部屋に忍び込んだ挙句、僕にお願い!?

 イヤな予感しかしないんだけど!?


「はい……その、『天国への階段』を見つけた後のことです」

「見つけた後……」


 いや、僕としてはそれ(・・)を見つけたら、ファルマ聖法国にお帰り願いたいんですけど……。


「アデル様」

「は、はいっ!?」


 ソフィア様は居住まいを正し、そのアクアブルーの綺麗な瞳で僕を見つめる。

 急に聖女然としたその(たたず)まいに、僕は思わず上ずって返事をしてしまった。


「私と一緒に、ファルマ聖法国へ来ていただけませんでしょうか?」

「はああああああああああっ!?」


 ソフィア様の言葉に、深夜なのに僕は大声で叫んでしまった。


「はい……アデル様のそのお力、まさに“神の御業(みわざ)”と言っても過言ではありません。あなたはこの私と同じく……いえ、この私を含め、多くの人々を導くためにこの世界に舞い降りたのです……」


 頬を赤く染め、瞳には涙をうっすらと湛えながら、ソフィア様がそんなことを言い出した。

 い、いやいやいや、なんで僕がそんな大それた奴になってるの!?


「ととと、とんでもない! 僕は“役立たず”と呼ばれ続け、失格の烙印を押されたような男ですよ!?」


 手をわたわたさせながら、僕は彼女の言葉を全否定する。

 い、一体彼女の中で、僕はどれだけ上位変換されてるんだ!?


「そんなことはありません! 他の者が何と言おうとも、アデル様は主神ファルマと同じ……いえ! それ以上の至高の存在なのです!」

「うわ!?」


 ソフィア様が僕の肩をつかむと、そのまま顔をグイ、と近づける。


「このソフィアの全てをアデル様に捧げます……ですので、どうか……!」


 そして……彼女はそっとその唇を……。


 ——トン。


「あ……」


 僕はソフィア様の両肩を押し、彼女を突き放した。


「申し訳ありません。僕の全ては、既にライラ様とハンナさんに捧げております」


 僕は無機質にそう言い放ち、ソフィア様を明確に拒絶した。


「ど、どうしてですか!? [聖女(セイント)]の私では足らないのですか!?」

「……[聖女(セイント)]だからとか、そういったことは関係ありません。ただ、僕にはあの二人が全て(・・)だというだけです」


 なおも食い下がるソフィア様に、僕はただかぶりを振る。


「……申し訳ありませんが、お引き取り下さい」


 僕は意志を込め、彼女にそう告げる。

 これ以上の問答は、僕にとって無意味だ。


「……分かりました」


 ソフィア様はス、と僕から離れ、肩を落としたまま扉へと歩を進める。


 そして。


「アデル様……ですが、私は諦めません」


 そう言い残し、彼女は部屋を出た。


 ◇


「アデル様、おはようございます!」


 次の日の朝、ハンナさんと一緒に朝食の準備をしていると、身支度を済ませたライラ様が食堂にやって来て元気に挨拶をした。


「はい、おはようございます」


 僕も笑顔で挨拶を返すと……何故かライラ様が僕の腕を抱き締めた。


「え、ええと……ライラ様?」

「ふふ……少しだけで結構ですのでこのまま……」


 そう言いながら、ライラ様が僕の二の腕に頬をすり寄せる。

 ほ、本当にどうしたんだろう……。


 すると。


「うふふ……でしたら、私も」


 ——ぴと。


「ハ、ハンナさん?」

「アデル様……このハンナ、世界中の誰よりも幸せです……」


 ハンナさんが僕の背中にもたれながら、(とろ)けるような声でささやく。


「ふふ……全部、アデル様がいけないのです」

「僕……ですか?」

「「はい……」」


 お、覚えがありませんが……。


「おはようございます」


 その時、ソフィア様が食堂に入ってきて、挨拶と共に軽く会釈した。


「ふふ。ソフィア様、おはようございます」

「おはようございます。よくお眠りになられましたか?」


 ライラ様が柔らかい瞳で見つめながらソフィア様に挨拶し、ハンナさんも笑顔で彼女に尋ねた。


「……ええ、お陰様で」


 ソフィア様もニコリ、と微笑み返すけど、昨日の一件もあってか、どこかぎこちない。

 ……夜中の一件があるから、僕も気まずいんだけど、ね……。


「ちょ、朝食の用意ができておりますので、お二人共お席へどうぞ」


 ライラ様とソフィア様にそう告げると、僕はソフィア様の椅子を引いた。


「ふふ、ありがとうございます」


 ソフィア様はチラリ、と僕を見ても笑顔を崩さず、見事な所作で席に着く。


「それで、本日は朝食が済んだ後に街の調査に出るのですよね?」

「はい、その予定です」


 ソフィア様がそう尋ねると、ライラ様が首肯した。


「では、『天国への階段』が見つかった際には、続けてその中の調査を行いたいのですが、それもよろしいですか?」

「ええ、構いません」


 そう告げたライラ様は、パンをちぎって口に含む。


「ありがとうございます。でしたら、その際には“黄金の旋風”も同行させたいのですが」

「っ!? ……それは、申し訳ありませんが承服しかねます」


 今度は打って変わり、ライラ様はソフィア様の要望を明確に拒否した。

 まあ、当然ではあるけれど。


「そうですか……ですが、調査は一日では到底終わらないと思いますので、私達四人だけで調査を続行するのは無理があります。できれば“黄金の旋風”を調査に加えることをお許しいただきたいのです……」


 そう言うと、ソフィア様が深々と頭を下げる。


「で、ですが、それであれば“黄金の旋風”以外の冒険者なり何なりを雇えば済む話では?」

「では、この街で“黄金の旋風”以上の実力ある冒険者達がいる、と?」

「…………………………」


 ……そう返されてしまうと、ライラ様も答えられない。


「……いかがでしょうか、アデル様?」


 ソフィア様が懇願する瞳で僕をジッと見つめる。

 ……昨夜の件があるから、正直負い目もあるんだよなあ……。


「……分かりました」

「「! ア、アデル様!」」


 二人が同時に僕の名前を呼ぶが、ソフィア様が喜色ばむ一方、ライラ様の瞳の色が困惑に染まる。


「ただし……調査の際は“黄金の旋風”と僕達三人は別行動です。よろしいですね?」

「は、はい! ありがとうございます!」


 ソフィア様がぱあ、と笑顔を浮かべ、僕の手を取って喜ぶ。


「……まあ、それくらいは(・・・・・・)譲っても仕方ないですね」


 ライラ様は僕達を見ながら、ポツリ、とそう呟いて肩を竦めた。

お読みいただき、ありがとうございました!


次回は今度こそ明日の夜更新!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] 普通に好き好きアピールしてれば聖法国には行かんだろうが最終的に好意を受け入れてくれそうなのに ソフィアこのままだとバッドエンドだよ
[気になる点] 黄金の旋風は普通に処刑されても不思議じゃないのだから一緒に探索するのは流石に違和感 実力が他よりあれば裏切ってもなんのペナルティ無し?
[一言] 聞いていたのか… しかし、別れて行動したとしても、アデルがいないと探索にもならないような気がするのだけれど。 そして、聖女は何を考えて彼らを引き込んでいるのかな。
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