表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/146

聖女が導くべき路①

ご覧いただき、ありがとうございます!

■ソフィア=アルベルティーニ視点


 十年前、私は故郷の村の教会で、自分が[聖女(セイント)]であると知った。


 カロリング皇国の辺境にある村の貧しい家庭に育ち、一日たった一回だけの食事すらままならない生活を送っていた私だったが、八歳になった時に村の教会で行われる神託式の日、私の人生が一変した。


 神父をはじめ、村中が[聖女(セイント)]の出現に沸き、私は崇め讃えられた。


 しばらくすると、ファルマ聖法国の神官とその一団が村にやって来て、私は村を出てファルマ聖法国へと連れて行かれることとなった。

 その時は、八歳で両親やたった一人の姉と離ればなれになることをつらいと感じたが、神官から嬉しそうに袋を受け取った時の両親の顔を見てそんな気持ちも失せてしまったのを覚えている。


 だって……私は売られたのだから。


 それからの私は、ファルマ聖法国で[聖女(セイント)]としての修行に明け暮れた。

 ファルマ聖教の教義を学び、[聖女(セイント)]が起こす“奇跡”という名の、職業(ジョブ)としての能力の強化に(いそ)しむ。


 ……いえ、[聖女(セイント)]の能力を考えれば、それを“奇跡”と呼んでも間違いはないのかもしれない。


 何故なら、たとえ瀕死の状態であったとしても生還せしめる【神の癒し(キュア)】や様々な苦難から身を護る【加護(プロテクション)】、全ての者を魅了し、導くことができる【先導(ドゥクス)】など、まさに[聖女(セイント)]の“奇跡”としか思えないような破格な能力なのだから。


 そして、そんな[聖女(セイント)]としての情操教育を何年も続けてきた私は気づく。


 人は、神の下に平等ではないのだと。


 何故かって? 決まっている。

 本当に平等であるというのなら、その職業(ジョブ)は同程度の能力でなくてはならない。にもかかわらず、職業には上位と下位があり、生まれながらにして差別化が図られているのだから。


 貧富の差にしたってそうだ。

 富める者は生まれながらにして永遠に裕福で、貧しい者は生まれながらにして永遠に貧しい。


 唯一平等があるとするならば、それは人としての生を終える時のみ。

 これだけは、どのような者であったとしても逃れることはできない。


 ならば、[聖女(セイント)]として生まれてきた私の使命は何なのだろうか?


【神の癒し】や【加護】を与え、全ての者をどこへ【先導】しろというのだろうか……。


 分からない。

 分からない、分からない、分からない。


 そんな苦悩の日々を抱える中、十八歳を迎えた私は教皇より一つの真理を告げられた。


 かの“アルグレア王国”には、『天国への階段』と呼ばれるものがある、と。


 それは、人知を超えた、まさに神へと至るもの……人の身では決して触れることのできない、触れてはいけないものであると。


 何故教皇が『天国への階段』を私に語ったのか、最初は理解できなかった。

 だが、その後に教皇の真意を聞き、正しく理解した。


 要は、この『天国への階段』によって人を等しく導き、救済(・・)したいのだと。


 心が躍った。

 こんなに興奮を覚えたのは、自分が[聖女(セイント)]であると知ってから初めてだった。


「……『天国への階段』さえあれば、私は全ての人を神の下へと正しく導くことができる」


 そう、私のこの[聖女(セイント)]の力は、そのためにあったのだ。

 そのために、私はこの世に生を受けたのだ。


 それさえ分かれば、私のすべきことは簡単だ。

 ただ、『天国への階段』を手に入れ、人々を導くだけ。


 私は教皇と話し合った結果、『天国への階段』の存在を確認するため、アルグレア王国へと赴くこととなった。


 アルグレア王国……特に国王は、私やファルマ聖法国が来たことに難色を示していたが、『天国への階段』のこと、私達の目的について丁寧に説明(・・・・・)すると、しばらく考えた後、協力していただけることとなった。


 それと同時に、この国について明るい現地の者を雇った。

 それが、アルグレア王国の暗殺者ギルドの長である“ジャック”という男だった。


 聞くところによると、この“ジャック”という男、教皇と既知の仲らしい。

 なので、アルグレア王国に到着した際には協力を仰ぐようにと、教皇からは助言を受けていたのだ。


 実際、このジャックさんは優秀な方で、王国に関するあらゆる情報や国王周辺の内情など、(つぶさ)に情報を伝えてくれた。

 私達ファルマ聖法国としては、その分ジャックさんへの報酬も高額になるものと覚悟していたが、彼の要求は意外にも些細(・・)なものだった。


 そんな中、国王の配下の者……この国の宰相と大臣が『天国への階段』を手に入れるための行動を起こした。


 なんと、『天国への階段』を管理する貴族を賊の仕業と見せかけて襲ったのだ。


 その話を聞きつけた私は、すぐさま国王に対し抗議した。

 そんな短絡的な真似をして、『天国への階段』が入手できなくなってしまったらどうするのかと。


 国王(いわ)く対応に問題はないとは言うが、到底信用できない。


 それから何の進展もなく、私は王都で悶々とした日々を過ごしていると、ある日突然、状況が動いた。


 それが……壊れてしまった筈の、一人の少女の復活だった。

お読みいただき、ありがとうございました!


次回はこの後更新!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] おおー、意外にも苦労人だった聖女ちゃん。 でもかなり洗脳されちゃっている感じが…… ジャックの報酬も気になるー! いつか彼の話も出てくるのかな。わくわく。
[一言] 聖女自身はけして悪い人ではなくて、むしろ善意にあふれているのか? まあ、善意からの行いの方がより厄介な事ってあるのだけれど。 天国の階段が人を全員天国に連れて行くもの、だったりして。それは…
[一言] あぁー狂信者ね。神にすがることしかできない女が死神に勝てるのかな? ただ、メギツネは今のところ復讐対象にははいらないかな?
2021/04/14 18:44 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ