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機械仕掛けの殲滅少女  作者: サンボン
第一章 復讐その一 ジェイコブ=カートレット
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ジェイコブの屋敷

ご覧いただき、ありがとうございます!

すいません、やっぱりあと二話投稿します!

 その後、しばらく二人に付き合い、ハンナさんに一言だけ言葉を交わした後、今度こそ僕は次のクエストへと向かった。


 依頼内容は、建物や庭の清掃だった。

 ギルドでは魔物討伐だけでなく、こういった生活系でのクエストも多くある。

 とはいえ、冒険者で受ける奴は滅多にいないけど。


 ただ、今回のクエストは、まさに僕にうってつけだった。


 だって……依頼主はあの“ジェイコブ”だから。


「本当に、まさかこんな絶妙なタイミングでこんな依頼を出すなんてなあ……」


 僕は依頼紙をしげしげと眺めながら呟く。


「だけど、せっかく相手のことを調べるチャンスだ。受けない手はないよな」


 うん、これで相手の懐に飛び込むことができるんだ……絶対に何かしらの尻尾をつかんでやる。


「っと、ここだな……」


 僕は街の北側にある、ひと際派手な屋敷を眺める。

 これこそが、あのジェイコブの屋敷だ。


「ええと、すいません……」


 僕はあえておどおどした態度で、門に立つ衛兵に声を掛けた。


「何だ?」

「そ、そのー……ギルドでこの依頼を受けまして……」


 衛兵に依頼紙を差し出すと、衛兵はしげしげと眺めた後。


「少し待ってろ」


 そう言って、屋敷へと向かった。


「お前、冒険者だろ? よくこんな依頼受けたな……」


 残っているもう一人の衛兵が、残念なものでも見るかのような表情でそう言った。


「はは……僕はギルドでも“役立たず”ですから、こういった依頼を受けないと生活できないんです……」


 僕は頭を掻きながら、情けない声で答えた。


「ふうん……だったらいっそのこと冒険者なんて辞めて、本格的にうちで働いてみたらどうだ? 何なら俺が声を掛けてやるぞ?」

「あはは、ありがとうございます。その時はよろしくお願いします」


 僕はペコリ、とお辞儀をすると、衛兵が苦笑した。

 ……人当たりも良いし、ひょっとしたら色々と聞き出せるかも。


「僕みたいな者でも雇っていただけるのであれば、こちらの屋敷では人手不足なんですか?」


 僕がそう尋ねると、衛兵が苦虫を噛み潰したような表情を見せた。


「そうなんだよ……最近、うちの主人が変な連中を大勢連れ込んでさあ。ソイツ等が来てから、ドンドン人……というか、主に侍女が辞めていってな……屋敷の掃除も手が回らない有様なんだ」

「そうなんですか……」

「お前もここで仕事するなら、ソイツ等に関わらないほうがいいぞ。実際、庭師の一人がソイツ等に半殺しにあったからな」

「そ、それは怖いですね……」


 その話を聞き、僕は身体を震わせた。


「まあ、何かされそうだったら俺に言え。いざとなったら助けてやるから」

「あ、ありがとうございます!」


 僕は衛兵に向かって嬉しそうに深々とお辞儀をすると、衛兵は少し照れ臭そうにしていた。


「いいぞ、ついてこい」


 衛兵に促され、僕は屋敷に向かって歩く。


 すれ違いざまに衛兵にお辞儀をすると、衛兵が手を振ってくれた。


「執事の“トマス”です」

「あ、は、初めまして! “アデル”と申します!」


 僕は落ち着かない様子で執事に自己紹介をした。

 というか、この執事……おおよそ執事の風体とは思えないな……。


 細く鋭い目に背は高いものの線が細く、ひょろっとした体型。

 まるで、蟷螂(かまきり)のような印象だな。


「では、アデルさんにはまず屋敷内の掃除をしていただきます。次に、庭の手入れを、そして……」


 執事は仕事の内容を矢継ぎ早に説明していくが、その量、到底僕一人で終わらせられるものじゃない。

 ……本気で言っているのか、それとも単なる嫌がらせなのか。


「……以上です。何か質問は?」

「あ、あのー……さすがにその量ですと、今日一日で終わりそうにないのですが……」


 僕は恐る恐る執事に尋ねる。


 すると。


「なら明日すれば良いでしょう? 別に依頼内容は今日中と言っている訳ではないのですから」

「あ、そ、そうですね……」

「では、よろしくお願いします」


 そう言うと、執事はスタスタとどこかへ行ってしまった。


 ……仕方ない、やるかー。


 僕はグイ、と服の袖をまくり上げると、屋敷の掃除に取りかかった。


 ◇


「ふう……」


 あれからかなりの時間が経過したが、まだ屋敷の三分の一……いや、四分の一も終わっていない。


「もうそろそろ日が暮れそうだな……」


 窓から外を眺めると、陽もかなり落ちて、影が長細くなっていた。


「さて……次の部屋に……っ!?」


 廊下を移動していたその時、突然足が引っかかって倒れ込んでしまった。


「へっへっへ、大丈夫か? ニーチャン」


 見ると、ガラの悪そうな三人の男が、僕を見てニヤニヤと笑っていた。

 どうやら、この連中が僕の足をかけたみたいだ。


「あ、だ、大丈夫です……」

「へへ、そうかい!」

「グフッ!?」


 すると、今度は僕のお腹を思い切り蹴り上げ、勢いよく転がった。


「あーあ、俺の靴が汚れちまったじゃねえかよ!」

「ガッ!?」


 お腹を押さえてうずくまっている僕に、連中はひたすら蹴り続けた。


 僕は致命傷を負わないように、頭を抱えて丸まりながら必死で耐える。


「チェ、つまんねえなー。冒険者だっつーから、歯ごたえあるかと思ったのによー」

「ワハハ! こんなクソみたいな依頼受けるような奴だぞ? まともな訳ねーだろ」

「言えてる」


 連中は大声で笑いながら、ようやく去って行った。


「イテテ……」


 あれが、衛兵が言っていた変な連中(・・・・)か……。


 あんな奴等の使い道なんかさすがに限られる。

 これはいよいよ……。


「と、とにかく、掃除の続き……するか……」


 僕は痛む身体に鞭打ちながら、次の部屋に……って!?


「ん? なんだ? この小汚い奴は?」


 入ろうとした部屋から出てきたのは、まさかのジェイコブだった。

お読みいただき、ありがとうございました!


次回はこの後更新!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] ライラとハンナの振る舞いがかわいいです。私は彼らがいつも主人公を気遣う方法が大好きです。仕事をありがとう。大好きです 。
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