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アイザックの街の末路

ご覧いただき、ありがとうございます!

本日は一気に五話投稿!その三話目です!

■サラ視点


「あー……暇ですねー……」


 ギルドのカウンターに突っ伏しながら、私はポツリ、と呟く。


 領主様であるカートレット伯爵が突然この街に要塞を築いて以来、街の住民の多くがモーカムの街へと移住してしまった。

 当然、冒険者達もこんな寂れた街なんかより、賑やかで良い条件の依頼を受けられるモーカムの街へと移って行った。


 といっても、モーカムの街も同じカートレット伯爵領なので、領主様的にはあまり変わらないんだろうけど。


「はあー……私もモーカムの街に移りたかったなー……」


 マスターにはモーカムの街への転属申請を出したけど、領主様に粗相(そそう)をした罰として、私の希望は一番後回しにされてしまった。


 だ、だけど、あのアデルさん……いえ、アデルが領主様と懇意にしてるだなんて知らなかったし、不可抗力ですよあんなのー……。


「ホントにもー……それもこれも、結局はアデルのせいですよー! アイツ、“役立たず”のくせに領主様の腰巾着に収まるなんてー!」


 あの時の怒りが沸き上がり、私はバシバシとカウンターを叩く。


 もー! アイツのせいで私の人生設計がメチャクチャです!

 “黄金の旋風”もこの街から去ってしまったし、そのせいでエリアル様に永久就職できなくなっちゃったしー……。


「……オイ」

「もー! 何ですかー! ……って、ゲッ!?」

「『ゲッ!?』じゃない……はあ、そんなんじゃモーカムの街への転属も相当先だな」

「そ、そんなー……」


 マスターの心無い言葉に、私はガックリと肩を落とした。


 その時。


「た、大変だっ!」


 突然、冒険者の一人がギルドに飛び込んできた。


「? どうした?」

「バ、ババ……!」

「「ババ?」」

「バケモノが現れたんだよおおおおおおおお!」


 はあ? バケモノ?

 この冒険者は一体何を言ってるんでしょうか?


「バケモノ? 魔物じゃなくてか?」

「ちち、違う! あんな……あんな魔物がいてたまるかよ! ニンゲンの顔してやがるんだぞ!?」

「「ハア?」」


 この冒険者の言っていることの意味がサッパリ分からず、私もマスターも呆けた返事をしてしまった。


「だだ、だったら見て来いよ! と、とにかく! 俺は今すぐこの街を脱出するからな!」


 そう言うと、冒険者は焦るあまりよろめきながらギルドを出て行った。


「……何だったんだ?」

「……さあ?」


 私とマスターは顔を見合わせ、首を傾げた。


 すると。


「ギャアアアアアアアアア!?」


 突然、ギルドの外から男の悲鳴が聞こえた。

 でも、この声……さっきの冒険者!?


「……ちょっと、様子を見てくる」


 ただ事じゃない雰囲気を感じたマスターは、執務室からマスターの武器であるバトルアックスを持ってくると、そのままギルドを出た。


 私も気になってしまったので、マスターの後に続いて外に出る……けど。


「アレー? 悲鳴を上げた冒険者の方、いませんねー……」


 私はキョロキョロと辺りを見回すが、やっぱり冒険者の姿は見当たらない。


「……おい、サラ。今すぐギルドの馬に乗って、この街から逃げろ(・・・・・・・・)

「へ?」


 真剣な表情で呟くマスターの指示に、私は気の抜けた返事をした。

 だけど……こんな表情の時は、マスターは冗談を言わない。


 つまり。


「走れえええええええええええええ!」

「はいいいいいいいいいいいいいい!」


 マスターと一緒にギルドへと全力で走る。


 何があるのかは分からない。

 だけど、この私にも背中越しにハッキリと伝わってくる。


 何か、ヤバイモノがある、と。


「ハアッ……ハアッ……!」


 息を切らしながらも、そんなことお構いなしに走り続ける。

 得体の知れないナニカから逃げ出すために。


「うおおおおおおおおお!?」

「っ!? マスター!?」


 突然マスターが転げ、叫び声と共に私の隣から姿が消える。


 私は慌てて後ろへと振り返ると……。


『キチキチキチキチ……!』


 ニンゲンの顔をした巨大なクモのバケモノが、その口から糸を吐いてマスターを捕え、前足で器用に手繰り寄せていた。


「サ、サラ! 逃げ……っ!?」


 ——ぼり。


「グアアアアアアアアアアアアアアア!?」

「イヤアアアアアアアアアアアアアア!?」


 マスターの脚がクモのバケモノにかじられ、マスターは絶叫した。

 そして、その光景を見たこの私も。


「ア!? ギ!? グベ……!?」


 ——ぐちゅ、ずる、ぺき。


 マスターはクモのバケモノの口の中へゆっくりと入って行き、クモのバケモノが咀嚼(そしゃく)するたびにマスターが奇声を上げる。


「あああああ……イヤ、イヤアアアアア……!」


 腰を抜かした私はいつの間にか失禁をしており、それでもバケモノから逃げようと、ずりずりと後ずさる。


 だけど。


「イヤアアアアアアアアアアアア!?」

「ヤメ!? ヤメテ!?」

「コッチ来るな!? 来るなアアアアアアア……あえ!?」


 気づけば、街中の住民がバケモノ達に捕まり、その身体を食べられていた。


「ヒイ……ヒイ……!?」


 私は顔を涙と鼻水でグチャグチャにしながら、ギルドへ向かって這いずる。

 馬……馬に乗って早くこの街から……っ!?


『ブルルルル……』


 ギルドの前で、ニンゲンの顔をした馬のバケモノが、ギルドの馬をかじっていた。


「いいいいいいいいやあああああああああああああ……たしゅ……たしゅけ……」


 全身を振るわせて命乞いをする私を、その馬のバケモノはキョトン、としながら眺めている。


 あ……い、今なら逃げ……。


 ——ぼり。

お読みいただき、ありがとうございました!


幕間一話目!あと二話、幕間を投稿いたします!


次回はこの後更新!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] サラって誰だっけ? ガチでわからなかった。。。
2021/05/17 20:39 退会済み
管理
[一言] みんな食料。食料人類とかいうマンガが有ったなあ。 土に還るといっても。化け物の消化管経由なんですねえ。
[良い点] ――ぁ。 ぼり♪ なんかもうゼツボウしか残されてない感じが最高!! 果たして残された希望はあるのか……!?
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