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機械仕掛けの殲滅少女  作者: サンボン
第五章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 後編
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愚王の末路

ご覧いただき、ありがとうございます!

■エドガー=フォン=アルグレア視点


「た、大変です!」


 リューズの街が壊滅してから三日。


 余が国王として政務に勤しんでいる中、近衛兵の一人が議場に飛び込んできた。


「何事だ?」

「ハ……ハッ! その……」

「早く言わぬか」

「ハッ! お、王都近郊にて、一匹の巨大な“紅き竜”が目撃されたとのことです!」

「「「「「っ!?」」」」」


 議場で余と共に政務を行っていた大臣や侍従達の表情に、動揺の色が浮かぶ。


「へ、陛下! これは一大事ですぞ!?」

「そ、そうです! 先日のリューズの街の一件をお忘れですか!?」


 皆が狼狽(うろた)え、口々に余の判断を仰ぐ。

 そんな中、余とアーガイル卿だけが冷静さを失っていなかった。


「皆の者、落ち着くのだ!」


 見かねたアーガイル卿が大臣達を一喝する。

 そして、あのこと(・・・・)について皆に話すよう、アーガイル卿が目配せしてきた。


「……陛下」

「うむ」


 アーガイル卿に促され、余は一歩前に出ると。


「聞け! 先日来より王国を騒がせている“紅き竜”、これこそ、我が王国の伝承に伝わる“神の眷属”が一柱、“ア=ズライグ”である!」

「「「「「な、何ですと!?」」」」」


 余の言葉に、アーガイル卿を除く全員が驚きの声を上げた。


「な、なら“神の眷属”は、今度はこの王国を滅ぼそうとしているのですか!?」


 大臣の一人が前に出ると、何かに縋るような瞳で余に尋ねる。

 まあ、民間に伝わる『アイザック王の伝説』では、王国に脅威をもたらした“神の眷属”はアイザック王によって封印されたと、間違って(・・・・)伝わっておるからな。


「心配せずともよい……今こそ、王家のみに伝わる『アイザック王の伝説』の真実を語ろう」


 余は訥々(とつとつ)と皆に語ってみせた。

 真なる『アイザック王の伝説』を。


「……つまり、“神の眷属”こそ王国に繁栄をもたらした、アイザック王に仕えし存在。いよいよ“神の眷属”が幾年の時を経て余の代にて封印が解かれたのだ」

「「「「おおおおお……!」」」」」


 先程まで動揺の色を隠せなかった大臣達の表情が、今では期待と不安が入り混じったものに変わる。


 ふむ……では、あと一押ししてみようぞ。

 余はアーガイル卿を手招きし、傍に控えさせると。


「皆の者、しばしここで待つがよい」


 余とアーガイル卿は議場を退室し、宮殿へと向かう。


「陛下……それで、聖剣“カレトヴルッフ”はどちらに……?」

「フフ……まあ着いてからのお楽しみだ」


 余は薄く笑みを浮かべると、宮殿内に秘密裏に設置した部屋を目指す。


 そして。


「ここは……?」

「うむ。ここが、聖剣“カレトヴルッフ”を祀ってある、“英雄の間”である」


 余が右手を上げると、侍従達は部屋の扉をゆっくり開くと。


「おお……! あれが……!」


 厳かに装飾された部屋の中央に、伝説を忠実に模した岩の台座に、一本の剣が突き刺さるように鎮座されていた。

 そして、それを見たアーガイル卿が、感嘆の声を漏らす。


「これこそが、かのアイザック王が女神“ティティス”から授かったとされる、聖剣“カレトヴルッフ”である」


 余は台座へと歩を進める。

 台座の前に立つと、そっと聖剣の柄を握り締めた。


「ぬん!」


 柄に力を込め、一気に剣を引き抜くと、聖剣の刃が光を反射して輝いた。


「フフ……この輝きこそ、聖剣の証」


 口の端を持ち上げながら聖剣を眺めていると、一人の侍従が恭しく一礼し、一本の宝飾された(さや)を差し出した。


「陛下……どうぞ」

「うむ」


 鞘を受け取ると、聖剣を収める。


「では、議場へと戻ろうか。大臣達も首を長くしているであろうからな」

「ハッ!」


 余は聖剣を携え、意気揚々と議場へと戻った。


「皆の者、待たせたな」

「「「「「陛下!」」」」」


 余は居並ぶ大臣達を一瞥した後、右手に持つ聖剣“カレトヴルッフ”を高々と掲げた。


「刮目せよ! これこそが覇者の証、聖剣“カレトヴルッフ”である! そして、余こそがこの世界の覇王である!」

「国王陛下、万歳!」

「「「「「国王陛下、万歳!」」」」」


 余の宣言と共に、アーガイル卿の音頭によって余を讃える大合唱が沸き起こった。


 とくと見るがよい。


 余こそがアイザック王の伝説を引き継ぐ者である。


 ◇


「ご報告します! “紅き竜”は“ラムトン城塞”を破壊し、この王都目前まで迫っております!」

「「「「「おおおおお……!」」」」」


 近衛兵の報告に、側近達が色めき立つ。

 王国最大の要塞、“ラムトン城塞”が破られたのだから、由々しき事態である筈なのに、皆の者のその期待と興奮に満ち目はどうだ。


「フフ……皆、逸っておるわ」

「仕方ありますまい。この日をもって、アルグレア王国が世界に覇を唱えるのですからな」


 そう語るアーガイル卿自身も、興奮を隠しきれずに顔を紅潮させていた。


 その時。


「陛下! “紅き竜”を確認しました! もう目前です!」

「うむ。さて……では、“ア=ズライグ”を盛大に迎えようではないか!」


 余が右手を上げると、控えていた楽団が一斉に演奏を始める。

 その雄大な音色は、アルグレア王国の……覇王となる余の門出に相応しいものであった。


「さあ! “神の眷属”よ! この聖剣“カレトヴルッフ”とエドガー=フォン=アルグレアの前に忠誠を誓うがよい!」


 鞘から聖剣を抜き、その刃先を天に掲げた。


 “ア=ズライグ”は王都上空に飛来し、余の目の前にその姿を現す。

 まるで、この覇王に従う忠実なる下僕であるかのように。


 すると、“ア=ズライグ”がその大きな口をさらけ出した。


 そして。


 ——目の前が、閃光に包まれた。

お読みいただき、ありがとうございました!


次回はこの後更新!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ここまで道化という言葉が似合う王は中々居ないですねwww 退場かぁ、寂しくなるなぁwww
[一言] 一瞬で逝けたのなら… それはむしろ褒美に近いかもしれません。
[一言] この王様結局最後まで大物感だけだして消えてったな。 伯爵家襲わせて大罪も大罪だったけど最後はあっさり消えた。
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