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機械仕掛けの殲滅少女  作者: サンボン
第五章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 後編
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港湾都市ブラムス

ご覧いただき、ありがとうございます!

「どうぞお通りください」


 街の門に立つ衛兵の敬礼に見送られ、僕達は街の中へと入る。


「ふふ……この街は独特の香りがしますね」


 ライラ様が街を眺めながら微笑んだ。


「ライラ様は海自体は初めてですか?」

「はい。アデル様はご存知なのですか?」

「あはは、実は僕も初めてです」


 そう答え、僕は頭を掻きながら苦笑した。

 まあ、僕の生まれ育った村は王国の山間部にあるし、海とは無縁だったんだよね。


「うふふ。では早く宿に入って、名物の海産物を食べに行きましょう」

「「はい!」」


 ハンナさんの提案に僕とライラ様は元気よく返事する。

 ただ……ライラ様でも壊れないような宿がこの街にあればいいなあ……。


 などと考えてたけど。


「では、こちらの宿にしましょう」

「おお……」


 そもそもこの街を知っているハンナさんは、ライラ様が宿泊しても大丈夫な宿も当然知っていた訳で。


「では、こちらがお部屋の鍵となります」

「あ、ありがとうございます」


 宿泊の手続きを済ませたハンナさんから、部屋の鍵を受け取る。

 ライラ様にも鍵を渡したところを見ると、今回はライラ様とハンナさんは別々の部屋に泊まるみたいだ。


 ということで。


 部屋に荷物を置いた僕達は、宿を出て早速海産物が食べられるお店を探す。


「ハンナさんはどこか美味しいお店をご存知だったりしますか?」

「いえ……以前来たのは十年も前のことですし、その時は任務で来ましたので……」


 あ……まだ、ハンナさんがジャックの元で[暗殺者(アサシン)]をしていた時、だもんな……。


「あ……うふふ、そんな顔なさらないでください。もう今となってはただの過去の一つでしかありませんし、それに……」


 すると、ハンナさんが僕の左腕に自身の腕を絡めた。


「……今日、アデル様がそんな過去を塗り替えてくださるのですから」

「ハンナさん……はい!」


 蕩けるような微笑みを浮かべたハンナさんに、僕は力強く頷く。

 そうだ……ハンナさんはもう[暗殺者(アサシン)]なんかじゃない。

 ライラ様の侍女で、パートナーで、そして……僕の婚約者なんだから……って!?


「そ、そうだ! 大事なことを忘れてた!」

「「ど、どうなさったのですか!?」」


 突然僕は大きな声をだしたものだから、二人が不安そうに僕を見る。


「あ、い、いえ……食事に行く前に少し寄りたいところがあるんですが……」

「「?」」


 そう告げると、二人はキョトンとした。

 ああ……僕としたことが……こんな大事なことを忘れるだなんて……。


「そ、それで……アデル様が行きたいところというのは……?」


 ハンナさんがおずおずと尋ねる。


「宝石商の店です」

「宝石商の店……ですか?」

「はい」


 そう……僕はこのお二人と婚約したんだ。

 新天地で新しい門出を迎える意味でも、この街に着いたら、その……婚約指輪を、プレゼントしたいと思っていたんだ。


 なのに僕ときたら、そんな大事なことを忘れるだなんて……


「た、確か、大通りの一角にあったと記憶していますが……」

「では、そちらへ向かいましょう」

「「は、はあ……」」


 少し困惑した表情を浮かべる二人と一緒に、その大通りにあるという宝石商の店へと向かう。


 すると。


「あ、あれがそうですね」


 大通りに出ると、宝石商の店は意外とすぐに分かった。

 だって、ひときわ豪華な建物で、ショーウインドウに数々の宝石が飾られていたんだから。


「「ア、アデル様!?」」


 僕は二人の手を引き、早速店の中に入ると。


「「わああああ……!」」


 困惑していたのもつかの間、そのキラキラした宝石を前に二人は瞳を輝かせていた。

 あはは、やっぱり二人共女の子、だなあ……って、ライラ様はともかく、ハンナさんにそれは失礼か。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなものをお探しで?」

「え、ええと……」


 店員が笑顔で尋ねると、ライラ様が戸惑いながら僕をチラリ、と見た。


「うふふ……本日は、お嬢様に似合う宝石がこちらにないかと思いまして。せっかく領地であるアイザックの街からブラムスまで来たので」


 微笑みを浮かべながら、ハンナさんがシレッと店員に説明する。特に、わざと『お嬢様』と『領地であるアイザックの街』と強調したのは、店員に(あなど)られないようにするためだろう。

 もちろん、僕に目配せしながら。


 うん、やっぱりハンナさんは頼りになるなあ。


「おお、そうでしたか。でしたら、ごゆっくりお選びくださいませ」


 僕達を上客だと考えたのだろう。店員の態度はさらに丁寧なものへと変わり、恭しく一礼してその場を離れた。


「……それで、どのような目的でこちらに?」


 ハンナさんが僕の傍に寄り、そっと耳打ちした。


「もちろん、お二人に似合う装飾品がないかと思いまして」

「っ! お、お気持ちは嬉しいのですが、その……これから他国へと渡ること考えますと、資金は豊富にあるとはいえ、無駄遣いは控えたほうが……」

「あはは、そうですね」


 うん、ハンナさんの言うことはもっともだ。

 もちろん僕も、こんな店で無駄遣いするつもりはない。


「まあまあ。それよりも、ハンナさんもあちらのライラ様のようにご覧になってください」


 僕は夢中でショーケースを眺めるライラ様を指差した。


「うふふ……お嬢様ったら……」


 ライラ様を見てハンナさんは苦笑すると、彼女もライラ様の元へと行った。


 さて……それじゃ僕も。


 僕はショーケースに近寄ると、飾られている指輪類を眺める。


 うーん、デザインはよく似たものが多いからすぐに決まったけど……宝石はどれにしよう?


 ライラ様の髪や瞳の色だと、真紅のルビーが似合いそうだなあ。

 ハンナさんの銀髪だと、ダイヤモンドやブルーサファイアなんかも……。


「「アデル様ー!」」


 あ、ライラ様とハンナさんが嬉しそうに手を振って僕を呼んでる。

 あはは、可愛いなあ。


 僕はそんな二人への婚約指輪をイメージしながら、彼女達の傍へと駆け寄った。

お読みいただき、ありがとうございました!


次回は明日の夜更新!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] ちなみに、この国では重婚は…
[良い点] なんだか今のアデルのクラフトがあれば、3人が細々と生活するぐらいは稼げそうですね。 店の護衛も必要無いだろうしwww ……まぁ過剰戦力なんですが(笑)
[一言] 馬「ライラ様、おめでとうございます!……でもつらい。とてもつらい(二重の意味でw)」 そして「ライラ様でも壊れないような宿」のパワーワードっぷりよ(* ´艸`)
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