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機械仕掛けの殲滅少女  作者: サンボン
第五章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 後編
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今度こそ、脱出へ

ご覧いただき、ありがとうございます!

「っ! ハンナ!」


 クロウ=システムで『天国への階段』の壁を滑るように上昇していく中、ライラ様が上方の暗闇を凝視しながら叫んだ。

「ちょ、ちょっと待って下さい!? ハンナさんが一体どうしたんですか!?」


 僕は嫌な予感がしつつも、ライラ様に尋ねた。

 まさか……ハンナさんもこの穴の中に飛び込んで!?


「……ハンナは、アデル様の元へと馳せ参じるために、私と同時にこの穴の中に飛び込んだのです」

「なあっ!?」


 や、やっぱり!


「だ、だけど! クロウ=システムを持つライラ様と違い、ハンナさんにはこの穴の中ではなす術もないじゃないですか!」

「……アデル様が(おっしゃ)ることは分かります……ですが、それでも飛び出さずにはいられなかったハンナの気持ちも、この私には分かります……」


 そう話すライラ様は表情を変えないまま、暗闇を見つめたままだ。


 すると。


「っ! 行きます!」

「え!?」


 ライラ様が合図と共に壁を蹴り、僕達は穴の中心へと飛んだ。


 暗闇を見据えると、僕の肉眼でもおぼろげながらに見えた。

 ハンナさんが、頭から真っ逆さまに落ちてくる姿が。


「ハンナさあああああああああああああん!」

「ハンナあああああああああああああああ!」


 僕とライラ様は上へと向かって大声で叫ぶ。


 だけど。


「え……?」


 僕の目に映ったハンナさんは、寂し気な表情を浮かべながらゆっくりとかぶりを振った。

 僕にはハンナさんのその表情と仕草の意味が理解できず、困惑する。


「ハンナ……ッ! あの馬鹿っ!」


 怒りの表情を見せながら、ライラ様がギリ、と唇を噛んだ。


 ハンナさんはものすごい勢いでこちらへと落ちてくる。

 何としてでも、ハンナさんを受け止めないと!


 僕とライラ様はハンナさんへと向けて両手を広げた。

 なのにハンナさんは、やはり哀しそうな瞳で何度もかぶりを振る。


 それはまるで、僕達を拒絶するかのように。


 っ! そんなの……そんなの、認めない!


「ハンナさん! 僕が……僕のことが本当に好きだと想ってくれるなら……!」


 僕は絞り出すような声で訴えかけるように叫ぶ。

 僕達とハンナさんが交差する、その瞬間。


「つかまれええええええええええええ!」

「っ!?」


 僕は目一杯その手を伸ばし、ハンナさんの手をつかんだ。

 ハンナさんも、僕の手をしっかりと握り返す。


 ——ごきん。


「ぐうううううううっ!?」


 ハンナさんの落下の勢いで、ボクの腕が思い切り引っ張られ、肩の関節が外れた。


 それでも……それでも、この手は絶対に離すもんかあああああああああ!


「【加工(キャスト)】!【製作(クラフト)】!」


 僕は着ている冒険者の服を【加工】して、ハンナさんの身体と僕の身体、ライラ様の身体を縛りつける。

 絶対に、離れないようにするために。


 そして。


「ハンナさん……つかまえ、ましたよ……?」

「ア……アデル様……」


 泣きそうな表情で僕の顔を見つめると、ハンナさんはそっと目を伏せた。

 そんな彼女を僕は強く抱き締め、クイ、と顎を持ち上げると。


「っ! ……ん……ちゅ……」

「……ハンナさん、僕達は三人で一つ(・・・・・)と誓ったじゃないですか。なのに、あなたは僕とライラ様を、裏切るのですか……?」

「っ!? そ、そんな! ……そんな……」


 僕が問い質すと、ハンナさんは最初こそ強く否定するが、その声は消え入りそうになっていく。


「……僕には、ライラ様とあなた、お二人だけが全てなんです。どちらか一方でも欠けてしまったら……僕はもう、生きる意味を失ってしまいます……」

「っ!?」


 僕の言葉に、ハンナさんが息を飲んだ。

 ……卑怯かもしれないけど、僕は彼女を縛りつけるためにこの言葉を選んだ。


 絶対に、僕から離れられないようにするために。


「も……申し訳、ございませんでした……」

「もう、あんなことしないでください……」

「はい……はい……! ハンナは……もう絶対に、アデル様のお傍から離れようとはいたしません……っ!」


 ハンナさんが泣きじゃくりながら僕の身体を抱き締める。


「ライラ様も、ですからね……?」

「もちろんです……私はどんなことがあっても、アデル様と共に……」


 僕はライラ様とハンナさん、二人を強く抱き締めた。

 絶対に離さないと、強い意志を込めて。


 ——オオオオオオオオオオオオオ……。


「おっと……のんびりしている場合ではありませんでしたね」

「ふふ……本当に、バケモノ共は無粋ですね」

「ええ……お嬢様、アデル様」


 僕達はお互いを見つめ合い、頷き合うと。


「では! 行きます!」


 ライラ様がクロウ=システムの出力を上げ、『天国への階段』の壁に取り付くと、僕達は、そのまま『天国への階段』の壁を疾走する。


「ハンナさん」

「? はい……」


 僕が彼女の名を呼ぶと、ハンナさんは不思議そうに僕を見た。


「正直に言いますと、『天国への階段』を駆け上がっている時、ハンナさんがあのジャックという男と会話しているのを見て、ものすごくヤキモチを焼いていました」

「え……あ……うふふ……」


 僕がそう告げると、ハンナさんが嬉しそうにはにかんだ。


「ライラ様」

「はい……」


 僕は、今度はライラ様を見てその名を呼ぶと、ハンナさんとのやり取りを聞いていた彼女は、どこか期待するような瞳で僕を見つめた。


「今お聞きになっていた通り、僕はものすごく嫉妬深いんです。ですので、ライラ様が他の男に話したりしたら、同じように拗ねてしまうかもしれません」

「ふふ……私はアデル様だけですから、他の殿方なんて眼中にありませんよ?」

「いいえ! それでも僕は、たとえ必要最低限の会話だったとしても嫉妬しますから!」

「はい、肝に銘じておきます」


 そう言うと、ライラ様は最高の笑顔で僕の胸に頬をすり寄せた。


 気がつけば、あのジャックという男にされたことなんてすっかり忘れて、僕達は笑顔のまま『天国への階段』から脱出した。

お読みいただき、ありがとうございました!


次回はこの後更新!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] イチャイチャア……!! そうだよね、ちゃんと三人でひとつって約束したんだから。 でも無事に(?)脱出できたようでなにより!! ……旋風さん?お疲れ様したぁwww
[一言] クロウシステムがマジ優秀。
2021/05/03 19:34 退会済み
管理
[一言] 嫉妬するほど愛が深い・・・なるほどなるほど ソフィアやカルラと話してるアデルにブーメランが 刺さりまくってマス。
感想一覧
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