『天国への階段』からの脱出④
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[技術者]の力で階段を砂に変え、高い壁も建造した僕達は、急いで階段を駆け上がる。
「ハア……ハア……!」
僕のすぐ前を走るソフィア様の息遣いが荒い。
とはいえ、先程までの打ちひしがれた様子はもうなく、代わりに……。
「ハアアアア……アデル様あ……!」
……ソフィア様の僕を見る瞳が怖すぎるんですけど。
それこそ、先程の昆虫のバケモノが可愛く思える程に。
なので。
「? アデル様?」
僕は右隣を走るライラ様をチラリ、と見ると、ライラ様は不思議そうに僕の名を呼んだ。
だけど、お陰で僕の心はものすごく癒されました……。
「アデル様、私もおりますが?」
気づけば、いつの間にか僕の左隣を走っていたハンナさんが、ジト目でこちらを見ながらそうアピールしてきた。
「そ、そうですね」
僕は苦笑しながらそう答える。
でも、僕の中には先程までのハンナさんとジャックという男とのやり取りが頭にこびりついて離れない。
本当に、女々しいなあ……。
その時。
——ブウウウウウウウウウン……!
「っ!? 何か来る!」
暗闇の底から、羽が羽ばたくような音が聞こえ、僕達は臨戦態勢をとる。
『キチキチキチキチ……!』
現れたのは、キラービーに似たバケモノだった。
ただし、顔はニンゲンのそれで、口だけキラービーと同じ牙を覗かせているが。
「ハンナさん!」
「はい!」
——ドン! ドン! ドン!
ハンナさんは素早くフギンとムニンを構えると、一斉に弾丸を発射させる。
「クッ!? 何発か外しました!」
ハンナさんにしては珍しく、弾丸はバケモノの身体に二、三発しか当たらず、それ以外は躱されてしまった。
そして。
『キチキチキチキチ!』
「っ!? 来ます!」
キラービーのバケモノは、けたたましい音を鳴らしながら、僕達の元へ高速で突っ込んでくる。
「【加護】!」
『ギチ……!?』
ソフィア様が叫ぶと同時に僕達の前に光の壁が現れ、バケモノが勢いよく激突した。
「くふ♪ 私のアデル様に、そんな汚らわしいものを触れさせる訳ありませんよ?」
妖艶な笑みを浮かべながら、ソフィア様が人差し指でそっと唇を撫でる。
「あは♪ アデル様がいつあなたのものになったのですか」
——ザシュ。
ライラ様は口の端を吊り上げながら、光の壁に向かって勢いよく鎌を振り下ろすと、バケモノの身体が縦に半割りとなった。
『ギチ……』
そしてキラービーのバケモノは、そのまま闇の中へと落下していった。
「……空を飛べるバケモノもいるのか……」
「……だったら、同じように現れたバケモノをその都度殺していくしかないわね」
「ああ……でも」
カルラの言葉に僕は頷き、また階段の上を眺める。
「多分、あと半刻程で出口にたどり着けそうだよ」
「どういうこと?」
僕の言葉に、カルラが訝し気な表情で尋ねる。
「ああ、これを見てごらんよ」
僕は階段の端にあるものを指差した。
「これって……蝋燭の蝋?」
「そう。ランプの蝋燭の最初の一本が燃え尽きた時に、交換の際にこうやってマーキングしておいたんだ」
「じゃあ……!」
ぱあ、と表情を明るくさせるカルラに、僕は力強く頷く。
「さすがはアデル様です! まさに……まさに、この私が身も心も、全て捧げるべき御方……!」
「あ、そうですか」
身を乗り出して恍惚とした表情を近づけるソフィア様。
誰か、この暴走する[聖女]様を何とかして欲しい。
「となれば、こんなところに長居は無用です!」
「はい! 行きましょう!」
僕達は頷き合うと、出口を目指して駆け上がる。
ゴールは、もうすぐだ。
◇
「っ! 見えた! 出口です!」
天井に見える光を指差し、僕は大声で叫んだ。
僕達はとうとう戻ってこれたぞ……!
「アデル様……!」
「はい、あとほんの少しです……!」
ジッと見つめるライラ様の藍色の瞳に僕は頷くと、逸る気持ちを抑えながら、僕達は階段を駆け上っていく。
そして。
カルラを先頭に、ソフィア様、ハンナさん、ライラ様の順に出口を飛び出す。
その次に、僕が出ようとして。
「クハ! 悪いな!」
「え……?」
突然、ジャックという男が僕の前に躍り出ると……僕を思い切り蹴り飛ばした。
僕の身体は宙を舞って階段に倒れると、勢いよく階段を転がり落ちていく。
「「っ!? アデル様!?」」
「「貴様あっ!」」
焦るライラ様とハンナさんの声、そして、ソフィア様とカルラの怒号が遠ざかる。
クソッ……やっぱりアイツは、最初から僕達の敵、だったか……。
そして……僕は階段からも逸れてしまい……暗闇の穴の中へと、吸い込まれるように落ちて行った……。
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