表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機械仕掛けの殲滅少女  作者: サンボン
第一章 復讐その一 ジェイコブ=カートレット
11/146

大切な人

ご覧いただき、ありがとうございます!

「は、はい! ここ、こちらのビ、ビッグベアの換金でよろしいでしょうかー!」


 ギルドに戻り、討伐したゴブリンの身体の一部とビッグベアの胴体をカウンターに置くと、受付のサラが怯えた声で応対する。


 それもそうだろう。

 ライラ様が軽々とビッグベアを抱えてギルドに入ってきた時には、サラに限らずその場にいた全員が驚きの声を上げたし。


 まあ、まさかこんな小さなライラ様がそんな怪力だなんて思わないよね……。


「ふふ、やりましたね、アデル様!」

「はは、ええ」


 初めてのクエストを達成し、嬉しそうに幻の尻尾を振るライラ様。

 そんな彼女の姿を見て、思わず僕の口元も緩んだ。


 ——バタン。


「ふう……やれやれ、やっと帰ってこれたな」

「フン! だけど途中でポーションが尽きるなんて、ちゃんと管理しなさいよね!」

「全くだ。その辺のフォローをしっかりしてもらわねば。私の防具も、しばらくは鍛冶屋に預けねばな……」

「キャハハ! ホントホント!」

「…………………………」


 口々に言いながら入ってきたのは……『黄金の旋風』の面々だった。

 そしてその後ろを、げんなりとしながら荷物を運んでいる男……多分、雇われの[運び屋(ポーター)]だろう。

『黄金の旋風』にいた頃、あれは僕の役割だったな……。


「……ん? ひょっとして、アデルじゃないか?」


 目ざとく見つけたエリアルが、僕を指差した。

 ……嫌な奴に見つかったな。


「キャハハ! ホントだ!」

「フン! アンタまだここにいたの? “役立たず”のくせに」

「まあまあ……彼も生きるために必死なんだから、そう言うな」


 はあ……相変わらず好き放題に言ってるな。


 そんな中。


「……どういうつもり?」


 怒った表情で、カルラが僕に詰め寄ってきた。


「……どういうつもりって?」

「決まってるわ。なんであなたがここにいるの?」

「なんでって……決まっている、僕は“冒険者”だから」

「っ! あなたに冒険者なんてムリなのよ! いい加減気づきなさい!」


 そう言って、カルラは僕の胸倉をつかもうとして……ライラ様にその腕をつかまれ、阻止された。


「……何?」

私の(・・)アデル様に手を出すのはやめなさい」


 ライラ様が無表情のままカルラを睨みつけた。


 そして。


 ——ミシッ。


「っ!? クッ、離しなさ……っ!?」


 ライラ様につかまれたカルラの手甲がひしゃげはじめ、カルラが慌てて手を振りほどこうとするけど、その腕はピクリとも動かない。


「っ! アンタ……!?」

「おやおや、少々大人しくしていただけませんか? ……雑魚の皆さん」


 カルラを助けようと飛び出そうとしたロロとセシルに、いつの間にかハンナさんが背後に回り込んでククリナイフを首筋に当てていた。


「……っ! このっ!」


 たまりかねたエリアルがギルド内で剣を抜こうとして……。


「やめないか!」


 執務室から出てきたゴライアさんが大声で叫んだ。

 すると、ライラ様はカルラの腕を離し、ハンナさんもス、と退いてククリナイフをしまった。


「……これは一体何事なんだ?」

「そ、それがー……」


 ゴライアさんが尋ねると、サラが困った表情で耳打ちする。


「ふう……とにかく! ギルド内での騒ぎはご法度だ! ……あなたも冒険者となられた以上、その辺ご理解いただきたい」


 額を押さえながらかぶりを振ると、ゴライアさんが懇願するようにライラ様に話した。


「ですが、この者達はあろうことか私の大切な人(・・・・)を侮辱しました。ハッキリ言って、私の領地にふさわしくありません」

「……っ!? ひょっとして、領主、様……!?」


 カルラをはじめ、『黄金の旋風』のみんなが驚きの表情を見せる。

 まあ……それはそうだろうな。


「いずれにせよこの無礼、どう落とし前をつける気なのですか?」

「「「「う……」」」」


 さすがにマズイと思ったのか、エリアル達は困惑の色を浮かべる。


 だが。


「……アデル。領主様の言った『大切な人』って、どういう意味……?」


 そんな中、カルラだけは恨みがましい視線を向けながら、僕に尋ねる。


「そんなの、言葉通りの意味ですが? それよりあなたこそ、私の大切な人(・・・・)に何の用ですか?」


 カルラにそう告げると、ライラ様が僕の身体にしなだれかかった。

 まるで……僕がライラ様のものであると、カルラに見せつけるように。


「……っ! そう……」


 カルラは唇を噛みしめると……(きびす)を返し、そのままギルドを後にした。


「お、おい! ちょっと待てよ!」


 エリアル達もそんなカルラを追いかけるようにギルドを出て行く。

 その表情は、まるで面倒事から逃げることができて少し安堵しているかのようだった。


「……アデル様、屋敷に戻ったら詳しくお話しいただけますね?」

「(コクコク)」


 ライラ様にすごまれ、僕は思わず無言で何度も頷いた。

お読みいただき、ありがとうございました!


次回はこの後更新!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 今日から読ませていただいてます。 カルラが(自分の幸せの為に主人公を切り離した時の言い訳として)望んだ状態になった(一応冒険中はかなり安全でかつ伯爵家に重用されてる)のにショック受けてるのが…
[良い点] 数話前の話になってしまいますが、カルラがアデルの身を想って追放したので、読者としては気分的に救いになるのか、何とも微妙な雰囲気を出す事に成功してますね! [気になる点] >「……アデル様、…
[一言] 運び屋を連れ歩かなきゃならない時点で冒険者が戦闘力だけではどうにもならない仕事だってのは明白じゃんね つまり主人公のようなやる気のある雑用係は実は安心して戦いに専念する上でかなり貴重な存在だ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ