1 脅威
ある村の話
「逃げなさい!」
「おじいちゃん! おじいちゃんも逃げようよ!」
「この腰が弱いワシには無理じゃ… おぬしだけでも逃げとくれ!」
村の高台からカンカンと甲高い鐘の音が鳴り響き、高台から遠くに見える魔物の群れが、まっすぐに村に来ているのを知らせていた。
村中の住人が慌てふためき、荷物をまとめるものや馬車を確認する者など、パニックになったり冷静に行動していたりする者で、溢れかえっていた。
「聞け! 一番足の早い馬を持っている者は、この手紙をギルドに届けてくれ! ワシらは、逃げながら助けがくるのを待つしかないぞ!」
そう村長が声を荒げて村中に響かせる。
それを聞いた一人の若者が手紙を貰い、馬に飛び乗り隣街へと駆けていった。
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「なあ…聞いたか?」
「なにをだよ」
「魔王が誕生したらしいぞ?」
「ただの出任せだろ? 魔王なんかここ数百年出てきてないじゃないか」
「それがな…騎士っぽい格好をしたやつらがコソコソしながら話してたんだよ… 信じられるか?」
「それは… ちょっと本当かもしれんな…」
「だろ? ギルドはどうすんだろうな…」
そんな会話がされた酒場の隅でチェイン達は、ご飯にしていた。
「おいおい これ以上肉はやらないぞ? 自分の分がなくなっちまう」
「ガルルル ガウガウ!」
「なんでそんなに怒ってんだよ! これは自分のじゃねぇか! 全部やれってか!?」
「グルル」
「ウンウンって首振るんじゃねぇよ!」
そんな会話が流れていた