1. 入学式だけど準備だけで疲れる
とりあえず筆が止まるまで書いてみます。
姿見の前に立って、自分の姿を確認する。
「………………うん。女だ」
「何言ってんのさ、お兄。時間大丈夫なの?あと頭も大丈夫?」
「いつから兄に向かってそんな毒舌を吐くようになったんだお前は」
オレがこんな姿になってからというものの、この妹は妙に距離が近くなって、今みたいにバカにしたり、罵ってくる。
オレとしても兄妹は仲良くあるべきだとは思うんだけど、流石に舐められすぎでは無いだろうか。
いかんいかん、のんびりしてる場合じゃない。なんたって今日は
「しっかし可愛いなぁ!!まさかお兄がこんな可愛い女の子になって、こんな可愛い制服着てるんだもんねぇ!」
「………………あぁもう黙っててくれ!!」
そう 女の子。
オレは住野透。れっきとした男であるが、大切な大切な高校の入学式を前にして先月、突然女になった。
_______姿見の自分を 改めて確認する。
ぱっちり二重、茶色が入ったさらさらの髪は肩あたりまで伸びている。触れたら折れてしまいそうな華奢な体。自分でもびっくりするくらい細い。あと全体的に小さい!ちっさいぞ!!
たしかに変わったときは
これオレ!? 可愛い! 美少女がいる!!
ってなったんだけど日が経つにつれて、鏡を見るたびに、なんか見慣れると節々にオレって感じるところがあって、最近はあんまり可愛いとか思わなくなっているのが現実だ。
いや、もともと背は高くなかったんだけどね。一般的な男性の平均身長は無い程度で、チビではなかった!絶対チビではなかった!!
……それは考えるのはやめよう。実際女になってから測ったことは無いけど155cmくらいの妹とそんな変わらないってことは、そういうことなんだろう…………
よし、またこっから伸びる。今年は10cmだな!!いけるいける!!寝る前に牛乳飲んで、あとはストレッチして
「お兄、たしかにお兄は可愛い美少女だけど、一人で無言で百面相するのは怖いよ?あとキモいよ?」
「お前は黙って手伝えばいいのだ」
「黙って、って言われて黙ってたら顔芸始めだしたのそっちだし」
減らず口を叩きやがって。あと顔芸言うなし。せっかく兄が、超ポジティブシンキングを実践しているのに本当に生意気な奴だ。
今日は女の子になって初めての登校。入学式だ!!
……まぁつまり女の子の制服を着ないといけないわけで
「自分で制服着れないくせに。試着したときのお兄の慌てっぷり……ぷっ、忘れられない!」
「し、仕方ないだろ!女の制服なんて着たことないし、というかこんなのオレ着たくて着てるんじゃないから!!」
「はいはい。ほら、リボン曲がってるよ」
「む、ありがと。」
ノリの効いた白と青を基調とした新品のセーラー服に身を包むオレは、どこからどう見ても女の子だ。
「あと、」
「ん?」
「スカート長い。膝下まであるじゃん。短くないと可愛くないよ」
何をいってるんだこの妹は
「オレは可愛いさを求めてないし、求めたとしても可愛くなんてない!!なんでオレがそんな女子みたいなことを」
「あーーうるさ。女子のくせに。はいはい失礼ーーと…………って足長いねしかし、ここにウエストがくるか〜〜」
「わ、お前!やめろ!くすぐったい!!」
「はい、オッケー」
「ん?」
おお
鏡にうつる目の前の少女は、確かにスカートを折って短くしたことで一気に垢抜けた印象がある。
うん、自分で言っててキモいな
とはいえ、これ高校生か?
頑張っても中学生にしか見えないけど大丈夫かな
ピン ポーン
「ほらお迎えがきたよ。早く行ってその姿で悩殺してきなよ」
「の、悩殺なんてせん!」
はぁ……ここからなんだよね。なんかめっちゃ疲れたけどまだ家すら出てないっていう
さて、あいつらはどんな反応するのかな
男のくせにおかしい、とか思われないかな