第三十三話 覚醒の時3
「ドケ」
ブレアに剣が突き刺さる瞬間、集の真横には巨体のアビスが現れていた。
何の前触れもなく現れた巨体のアビス、そしてそのアビスは裏拳で集を軽々しく吹き飛ばす。
瞬時に現れたアビスに防御行動が追いつかず、集はアビスの裏拳を直撃してしまう。
「集!!」
蓮はボロボロの体を何とか動かし、雪菜の元までいつのまにか辿り着いていた。
そして集に向け叫ぶ。
雪菜を抱えるように肩を抱き、雪菜を起こそうと肩を揺らす。
だが雪菜は反応もなく、目覚めない。
「クソ……。 やっとブレアを倒したと思ったのにこのタイミングで増援かよ」
突然現れた巨体アビス、通常のアビスの5倍はあるであろう大きさだ。
ゴリラを彷彿とさせるアビスは筋肉が盛り上がっている。
雅人が戦ってくれているアビスとは比べ物にならないほどの心圧を放っている。
(どっから現れたんだ……。 こんなんが続いたら流石にヤバイぞ)
蓮は周りを見渡し他にアビスが増えたか確認する。
「これ以上は増えないですよ」
蓮の真横からいきなり声が聞こえた。
蓮はその瞬間自分のアーツでその声の主に斬りかかる。
見なくてもわかってしまう。 突然に現れた声の主が自分達の敵であると言うことを。
蓮の刃は声の主である新たに現れた人型のアビスに右手の5本の指で受け止められてしまっていた。
「せっかちな人ですねほんとに」
さっき現れた巨体アビスとは違い人らしい喋り方、限りなく人に近い形をしていた。ブレアと同じ雰囲気を感じさせる。
だがブレアと違うのは圧倒的な冷静さ、蓮と話しているのにまるで眼中にない。
「お前達は何だ」
蓮は剣を受け止められながらも言葉を投げる。
「『何だ』ですか、あなた達は私達を見るたびにそういいますね」
「見るたびに?」
「ええ、そうですよ。 あなた達は私達を見るたびにその質問をする。 そして私達はその質問をされるたびにこう答える……。 私達は人間だ……と……」
(人間だと……)
蓮は絶句した。
この人間の形をした化物から『人間』なんて言葉が出てくるなんて。
「ふざけた事を言うな、お前達みたいな化け物が人間な訳ないだろ」
蓮は精一杯相手を睨む。
「本当に毎回このやりとりをするのは疲れますね本当に」
そう喋った瞬間、人型のアビスの手が光、蓮が持っているアーツが消えた。
「なっ……」
蓮は自分が持っていたアーツ消えたことに驚く。
そして少し離れた場所に蓮のアーツが空から落ち、そして地面に突き刺さった。
「もうあなたに興味はない。 最後に一つ、あなたはさっきからお前と呼びますが私の名前はサリ、そしてあそこにいるのがガウス」
そしてサリは歩いて行き、ブレアの前まで辿り着く。
「何してるんですかブレアさん」
「うるせえんだよカスが」
「今の状態でよくそんな口が聞けますね。 ガウス、ブレアさんを担いでください」
ガウスは首を縦に振り、ブレアを肩に担ぐ。
「それではさようなら」
サリがそういうと、一帯の地面が光る。 そして先程までいたブレアとサリとガウスと何千というアビスは一瞬にして消えた。
「アイツらはいったい……ツッ……」
蓮は体の痛みを思い出した様に脇腹を抑える。
冷や汗をかき体の限界が近い事を感じる。
「クソっ無理しすぎたか……」
俺は雪菜の肩を抱えながら片手を地面につき、地面に倒れかかろうとした、その時。
「本当にみんな無理しすぎだって、悪いなピンチに何も出来なくて」
倒れようとした蓮と雪菜を抱えるように雅人がそれを支える。
「今来てくれただけでも助かったぜ」
そう言い蓮は意識を失う。
「さてと、香澄。 集は大丈夫か!?」
雅人は香澄に声をかけ集の安否を確認する。
「意識は失ってるけど大丈夫」
香澄は雅人に返事を返す。
「後は博士を待つだけか……」
そうして雅人たちは葉風が来るのを待った。




