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クロッシングワールド  作者: たぬきいぬ
第二章     アビス
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第三十一話     覚醒の時1

やめろ


今雪菜が目の前でアビスに殺されようとしている。


      やめろ


 俺にはアイツを倒す手段がない。


      やめろ


   ならどうすればいい?


     どうする?


     どうする?


俺の意識の中でもう一人の誰かが俺に話しかける。


     どうしたい?


もう一度その誰かは俺に問いかけた。


   雪菜を助ける力が欲しい。


    俺はそう誰かに答えた。


   ならお前はこれから一つずつ大切な物を失っていく。 


     それでもいいのか?


   誰かが訪ねた最後の問いに俺は首を縦に振る。


        そうか……。 


      なら、始めよう。


   そしてその瞬間俺の意識は深い闇に落ちていった。






何かが爆発したような衝撃が戦場に響く。


「何なんだ! テメーわ!!」


ブレア生まれて初めて死の恐怖を感じた。


何よりもブレア自身が驚いている。


自分が初めて感じている感情。 


そして何よりブレアは目の前の人間の突然な変化に恐怖を感じている。


「…………」


集は何も言葉を発しない。


ブレアに対しての返事もしない。


そして集は右手の拳を真横に振り、何も無い空間を叩く。


集が叩いた空間は砕け散りその場所から一本の剣が現れる。


現れたのは雪菜の剣、いつもなら双剣だが現れたのは片手のみ。


集は剣を掴む。 その瞬間、空間が爆発したような振動が起こる。


「!!」


そして集はブレアに向け走り出した。


だが集の速度は先ほどブレアに斬りかかった攻撃速度の比ではない。


地面を一蹴りしただけでブレアとの距離を一瞬で詰める。


集の移動速度はもう能力者のそれと同じだ。


(さっきとスピードが全然違いすぎる。 だがアイツらと同じレベルだ。 何より俺にその刃は通らない)


ブレアは集の動きに合わせ、右腕を伸ばす。


掴めば一撃で相手を絶命させることの出来る右腕、力加減を誤れば一瞬で人間など潰せてしまう。


雪菜を掴んだ時は加減をしていた。


だがブレアは行動自体が早いわけではない。


当たらなければ致命傷にはならない。


ブレアは右腕を伸ばし集に襲い掛かる。


集はブレアの右腕を避けるわけでもなく、そのまま雪菜のアーツでブレアの攻撃を受け止める。 集はいつの間にか雪菜のアーツを左手に持ち替えていた。


受け止めた集の足元は地面にヒビが入る。


だが集がブレアの攻撃を受け止めたのは片手。 右の掌を開く。 そして右の掌が光出す、そして現れたのは蓮のアーツ。


蓮のアーツで集はブレアの腹部に斬りかかる。ブレアは集の一瞬の行動に反応できずそのまま斬撃を受けてしまう。


「ガァッ!!」


ブレアの斬り裂かれた腹部から黒い血のようなものが流れ出す。


そして集は右腕を返しもう一度ブレアに切り返す。


「テメー!!」


ブレアは右腕を引き集との距離をとる。 集の二度目の攻撃は間一髪のところで回避した。


だがブレアが距離を取った瞬間に集もブレアと距離を縮めるため前進していた。


「こざかしい奴が!」


ブレアは右腕で集に攻撃し、集は双剣でブレアに迎え撃つ。


右腕と双剣はぶつかり合い、金属音を響かせる。


(一撃一撃が重いわけじゃねー、だがなんなんだ。 押しきれない)


「何なんだテメーわ!!」


ブレアは集を恐れていた。 いや正確にはそうではない。 ブレアは集の背後にいる何かに恐れていた。 だから行動の一つ一つが遅れてしまう。


だがブレアが言葉を放った先は集ではなく、その後ろの誰か。


ブレアは生まれてこれまでこんな感情を感じたことがない。 威嚇しても引かない、心圧を放っても動じない、さっき蓮と雪菜には効いていたはずなのに、同じ人間なのに集には聞かない。 ブレアにはそれが異次元のことに感じてしまう。


そしてブレアは右腕を前に突き出し、またあの攻撃をしようとする。


だが集はそんなことお構いなしにブレアに突っ込んでいく。

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