第十八話 これから
地図は凪と香澄が進んでいる方向を赤いマーカで示し、映像には凪のイヤホンに付けられたカメラで行動風景が映された。
途中戦闘が行われたりするが、凪と香澄は難なくアビスを倒していく。だがその映像には人型のアビスは映されず、俺が最初に戦った、狼型のアビスと蜂型のアビス、その他にも元の世界で見たことのある生き物の形をしたアビスと戦っている。
「私達が戦ったアビスは対して強くはなかった、いつも通りって感じだった」
凪はさも余裕そうに事あったことを話した。
「私と凪だからね、危険な場面は無かったよ」
それぞれが高ランクの能力者では無いにもかかわらず、それぞれが確かな実力を持っている。それはただ単に強いというわけでは無い、能力者としてはランクは低いが、それを上回る技術と戦闘センスがある。
ここにいる皆、ランクは同じD。雪菜と同じランクだ。序列までは聞いてはいないが、もしかしたらかなり高い順位かもしれない。ただの偶然かもしれないが、この施設にいる能力者は全員ランクはD以下。もしここにランクAの能力者がいれば簡単にこの世界から脱出できたかもしれない。
だが何故か低いランクの能力者しかここにはいない、もしこの世界に高ランクの能力者がいれば……、そんなことを考えてしまう。
「地図のマーカーを見て貰えば分かると思うが、凪と香澄に調査してもらったのはこの施設から南の方向。 南に蓮達とほぼ同じ距離調査してもらったがアビスも対して強くなるわけではなく、変化はなかった」
「状況的には北に進むほどアビスが強くなるかもしれないと言うことくらいか……」
「これからどうするんだ? 北を攻めるのか? それとももう少し多方向も探索していくか?」
雅人は蓮に向け話す。
「いや、これからは多方向の探索は中止して、北に攻めようと思う。 このままここで足踏みしていても仕方がないしな」
蓮は立ち上がり校長室に隣接している部屋に入っていく。
そして数秒が経ち校長室に設置されているスピーカーから蓮の声が聞こえてきた。
「あ〜、皆聞いてくれて、全員に報告する事がある、今から体育館に集合してくれ」
言葉が終わると同時にスピーカーからプツリと音がきこえそれ以降蓮の声は聞こえなくなった。
「は〜、緊張した〜」
校長室の隣の部屋の扉が開き蓮が現れる。
「そこ放送室だったのか」
前に入ったことはあるが放送室だということは気がつかなかった。
「ああ、まあ本当はここに扉なんて無かったんだけど、くり抜いてつけたんだよ。元あった扉は校長室の入り口の隣にあったけど塞いだんだ」
蓮は放送室の扉をコツコツと叩きながら話した。
「んじゃ俺達が遅れるわけにはいかない、みんな行こうぜ」
「ちょっと待て、蓮はここに少し残って」
葉風が蓮の肩を掴み動きを封じた。
「なんですか葉風さん? 俺なんかしましたかね?」
蓮は額に汗を浮かべている。
「皆は先に行っていてくれ、すぐに行くから」
葉風は笑顔を浮かべ俺たちを見送る。
「蓮には私にも愛嬌があるところを見せなくちゃいけないからね」
「待ってくれ行かないで」
蓮は俺と雪菜に助けを求めるが、俺たちは葉風の笑顔が怖くなりそそくさと部屋を出る。
「それじゃ行こうか集くん」
「あ、ああ」
雪菜は振り返りながらそう言い部屋から出ていく。俺もそれつに続き部屋を出た。その後蓮がどうなったか俺たちが知ることはなかった。
体育館までの廊下を歩く、体育館はまだ行った事がなかったが何故かそこまでの道はなん後なく分かった。どの学校も同じような作りではあるがこの真っ暗で閉ざされた空間、外から入る明かりがなく、電気の灯りだけが照らすこの廊下はここにしか無い光景だ。
そして体育館にたどり着く、壇上の上には蓮が立っていた。




