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クロッシングワールド  作者: たぬきいぬ
第二章     アビス
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第十六話     生還

 そして雅人も同様に人型のアビスと交戦し勝利を収めた。


「何なんだよあのアビスは、今まであんなやついなかっただろ」


 能力者との対戦なら何度か元の世界で戦ってきた蓮達だが、殺しを目的とした戦いは初めてだ。能力者とは違い攻撃を一度でも食らえば死んでしまう。


 顔に斬撃をかすめる程度の怪我をした雅人は自分の手で顔の血を拭う。


 そして手に着いた血を見つめ改めて自分がそういう世界にいるのだと思い知る。


(これからあんなアビスがもっと出てくる、弱いままじゃすぐ殺されるぞ)


 地面に自分の手に着いた血を払い、集合地点に走り出した。


 三人は集合場所に集まりお互いの安否を確認する。


「二人もアビスと交戦したのか?」


 蓮は雅人の顔の傷と、雪菜の制服の汚れを見て悟る。


「その様子だと、二人も戦ったんだね人型のアビスと」


「まさか人型のアビスまでいるなんて思わなかったな」


 三人は顔を見合わせて無事であることに笑い合う。


 蓮は耳元に手を当てる。


「話は後だな、まずは拠点に戻って報告しないと。 博士大体は聞いてるんだろ」


「聞いてる、報告は後にして早く戻ってきて」


 博士は淡白な返事をしプツリとイヤホンからの音が切れる。


「本当博士のやつはもうちょっと愛嬌を見せてくれてもいいと思うんだけどな」


 蓮がポツリと博士の愚痴を呟く。


「帰ってきたら覚えていなさいよ」


 蓮はイヤホンの電源を切ることを忘れ、自分の声だけ拠点にいる博士に声が届いてしまっていたのだ。


「あまり覚えていたくはないんだが……」


 もう拠点から返信は来ない。


「え? マジで? このまま帰ったら俺間違いなく博士に怒られるじゃん」


「怒られるね」


「間違いなくな」


 蓮の顔はみるみる青ざめていく。その顔を見て二人は笑う。


「ほら、早く拠点に帰って報告しなきゃ」


「ほら行くぞ」


 地面に釘が刺さる様に動かない蓮を、雅人と雪菜は背中を押し元きた道を戻っていく。

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