第十五話 二人の戦い
森の木の合間、少し開けた場所を集合場所にししていた。
「っ!!」
一瞬で冷や汗を掻く、自分の真後ろから向かってくる殺気を感じ俺は自分のアーツを形成し、殺意に向け斬りかかる。キーンと甲高い音が響き渡る。目を向けるとそこには人がいた、だがそれは俺達が認識している人では無かった。
全身が黒くそれでいて人の形をしていた。何よりも驚いたのは俺に斬りかかってきた物体は剣ではなく、その黒い人の腕から生えていた。俺のように手で持っているわけでは無い、手は存在せず日本の腕が両方とも刃になっていた。
(コイツは黒い人型のアビスってとこか……)
俺は斬り下がり、アビスと距離を取る。コイツは今までに戦ってきたアビスじゃない、今までのアビスは知性はなくただ一直線に襲いかかってくるだけだった。だげどコイツは違う、今の一撃は確実に俺の意識の外から、音もなく襲ってきた。これをタダの偶然という言葉だけで終わらせれば俺はコイツに殺されるだろう。
「はぁぁぁぁぁ」
俺は目を閉じ、深く息を吐き呼吸を整える。剣を構えゆっくりと目を開ける、目の前には人型のアビス。今までの敵とは違う、理性を持ち、考え攻撃しれてくる。
「行くぞ」
俺はハッと息を強く吐きアビスとの距離を一瞬で詰めアビスに斬りかかる、表情も何も変えないアビスは、俺の斬撃を防御できないまま俺に斬り裂かれた。ボロボロとアビスの体は崩れ砂になっていく。
人型のアビスであっても死に方は他のアビスと同じ、ただ砂になり消える。
俺はイヤホンに手をかざし雪菜と雅人に連絡を試みる。
「雪菜、雅人早く集合場所に戻ってくれ」
俺はイヤホンに向け話すが、二人は返事をしてくれない。
(クソっなんで返事をしてくれないんだ)
俺の心臓の鼓動が早くなる、この世界では誰だって簡単にアビスに殺されてしまう。
「ーーーッ」
「!!」
イヤホンから僅かだが雪菜の聞こえた、俺は安易に何が起きているか予想ができた。
(俺が着くまでなんとか持ち堪えてくれよ)
俺は全力で雪菜が向かった方向に走り出した。
「コレがアビス?」
雪菜の目の前に現れたのは蓮の前にも現れた黒い人型のアビス、蓮が戦ったアビス同様両腕が刃になっている。
雪菜が驚いているとアビスは雪菜に攻撃を仕掛けてくる。アビスは右腕を振り上げ徐々に雪菜に刃が向かってくる。雪菜と同じ二つの刃を使うアビスの攻撃を雪菜は自分の双剣で受け止める。
「アナタは喋れるの?」
雪菜はアビスに喋りかける、見た目は人間の形をした人形。よく見れば口も耳も何もない、あるのはのっぺらな顔に両腕の刃だけ。
「…………」
雪菜が話しかけるも、アビスは何も答えてはくれない。口が無いのだから喋ることができ何のは当たり前だろう、あの何もない顔から口が現れ喋るわけでもない。
「そりゃそうか〜〜、喋らないよね」
雪菜はアビスの攻撃を払い、バク宙をしアビスとの距離を取る。地面を滑りながらもアビスから目を離さない、そして地面を強く蹴り一気にアビスとの距離を縮め双剣でアビスに斬りかかり、連続で攻撃する。
アビスは雪菜の攻撃を防ぎ続けるが、攻撃を受け止めきれず雪菜の攻撃がアビスの体を切り裂いていく。
雪菜の攻撃は一撃一撃は重くはないが、連撃性に優れ双剣である特権を生かし手数で敵を翻弄する。
「はぁぁぁぁぁっ!!」
雪菜の攻撃は徐々にスピードが増す、それだけではない。攻撃一つ一つのキレも増しいつの間にかアビスの体は雪菜の斬撃だらけになっていた。
ズタズタになったアビスは雪菜の攻撃に耐えきれなくなり片腕がちぎれる。それでもアビスは雪菜を殺そうと残った片腕で攻撃してくる。
それを雪菜は片方の刃で受け止め、もう片方の刃で斬り上げアビスのもう片方の腕を斬り落とした。
両腕を無くしたアビスはもう動かなくなってしまった。
「アナタの諦めはこれから先の多くの命を救う……だから、さようなら」
雪菜はアビスの首を斬り裂く。頭の無くなったアビスは後ろに倒れ砂になり消えた。
「ふ〜〜」
雪菜は自分のアーツを解除する。氷が結晶が落ちて割れる様に砕け散る。
「人型のアビス……そんなものまでいるなんて。この世界はどうなっているの?」
この世界で雪菜が出会ったアビスは獣型、昆虫型、そして人型。獣型のアビスは基本狼の様な姿をした四足歩行のアビス。基本的には爪と牙での攻撃、単純そうな行動でもスピードのある攻撃を避けるのは能力者でなければできないことだろう。昆虫型はタイプにより攻撃パターンが異なるため相手の攻撃をしっかり見極めなければならない。
だが今、目の前に居るのは人型のアビス。元の世界で能力者と戦ってきた雪菜達にとっては一番戦いやすい相手ともいえる。
「早く集合場所に戻って蓮達と合流しないと」
雪菜は集合場所まで走り出した。




