第十三話 探索開始
「すまん、少しいいか?」
俺の声に中から「はい」と言う、短い声だけ聞こえしばらくして中から葉風が出てきた。
「なんだ集じゃないか、どうしたんだい?」
「ここで雪菜達の様子って見れるのか?」
俺は自分が雪菜達の様に戦場に行けなくても、雪菜達を見守りたいと思った。自分が出来ないことを誰かがやってくれている、それが命をかけたことであるなら尚更、目を逸らさず見ていたいと思った。
「見れるけどカメラは蓮のイヤホンに取り付けてあるから、あまり見やすく無いかもしれない。中に入って」
葉風は部屋の中に通してくれた。中は8畳ほどの部屋になっていて、本棚にパソコン、机があり机の上には資料が散乱していた。資料を見るが内容は全然理解できなかった。
「何してるの?こっち」
葉風が才人が座っている机のところに手招きする。
「集さんじゃないですか、何しにここへ?」
才人はまだ俺がここに来た理由を聞いていないらしい。
「蓮達の映像が見たいらしいよ」
葉風は才人の隣の席に座る。才人の目の前にはノートパソコンがあり、それを二人で覗き込んでいる。俺はそれを立ったまま後ろから眺める。その画面にはシューティングゲームの様に一人称視点で、森の中を歩く映像が映っている。横をみたり後ろを振り返ったりと常にどこかに視点を動かしていた。
「才人が着けているイヤホンで声をかけたりできるのか?」
いつしかの説明でここから指示しているなんてことを聞いた気がする。それがこの場所かどうかの確認はしておきたい、何かの時にアドバイスが出来るかもしれないから。
「ええ、僕が着けているイヤホンから指定した相手に喋れます、試しに蓮さんに喋りかけてみますよ。蓮さん聞こえますか?」
「ああ聞こえてるよ、急にどうした?」
パソコンのスピーカーから蓮の声が聞こえる、そしてモニターに映っている画面に指の様な影が入った。多分蓮が聞きやすい様にイヤホンを手で押さえ、風を遮っているのだろう。
「動作確認です、それと今この部屋に集さんがいます」
才人は蓮に俺がこの部屋にいる事を伝えた。
「そんな気はしてたよ、雪菜と回線繋ぐか?」
才人は俺の方を向き回線を繋ぐかどうか目で確認してきた、俺はそれを首を横に振る。さっき別れたばかりで今また雪菜と話をするのは少し恥ずかしい。
「いえ、大丈夫です。それより例の人影は見つかりましたか?」
才人は蓮に今の状況確認をする、パソコンから見る風景では人影らしき物は見えない。だが実際に見える景色や物音なんかでも情報が違ってくる。
「今んとこまだそれらしき物は見えてこないな、いや……人影じゃないがバレちまったらしい」
パソコンの画面、蓮の視界を映し出すその画面には俺を襲ったアビスが三体現れた。
「いっちょやりますか」
「任せた」
「お願いね」
蓮はアーツを形成し、戦闘準備に入るが、雅人と雪菜はアーツも形成せずその場に立ったままだ。
「お前らな〜、まあいいけどな」
蓮が声を出した瞬間、アビスは蓮に向け襲い掛かる。だがそれとほぼ同時に画面に移った映像は大きく揺れ、揺れが治る頃にはアビスの姿はなかった。
蓮が雪菜と雅人の方に振り返る。ただそれだけのことなのに俺は驚いた。どう考えてもさっき蓮が動き、画面が揺れた瞬間で蓮と雪菜達との距離がかけ離れていた。
蓮はアビスとの距離を一瞬で詰めあの一瞬でアビスを三体倒した
「まじかよ……」
俺は驚愕した、ただでさえ俺が殺されかけた時、雪菜がアビスを倒す姿に魅入られた。だけど蓮はその瞬間すら与えなかった、画面越しにもわかる攻撃の速さは、俺が模擬戦で戦った誰よりも早かった。




