第六話 悪意再び
金曜日、飲食店は多くの客で賑う時間になる。バイト先がファミリーレストランで働いている俺は夜の10時まで汗水流し働いている。
研究費として報酬は受け取っているがそれ以外にもこうしてアルバイトをしてお金を貯めている。
バイトが終わり俺が住んでいるアパートまでの道を歩いていると、どこからか視線を感た。
だが後ろを振り向くがそこには誰もいなかった。
(最近こういうこと多いんだよな〜。自信過剰なのかね?)
俺は寒気を感じ、いつもよりも早足で家に帰ることにした。
歩きで通っているこの道も家まで半分という距離まで来ていた。歩きながらペンダントの女の子のことを考える。
普通なら落し物を拾えば交番に届けることが一番落とし主に早く届けられる方法なのだが、このペンダントはあの時ぶつかった女の子に自分で届けたいと思った。
それは何故だかわからない。単純にぶつかった女の子が可愛いとか、同じ学校だからとかそんな単純な理由でも無い。だがその答えを出せないまま家に着いてしまった。
(月曜日にまたあのクラスに行かなきゃいけないのか、道長連中は警戒しとかないとな)
今日の放課後のようなことが起きないように動かなければならない。日向の元気のない顔を思い浮かべると心が痛む。
土曜日の今日もバイトがあるためいつものバイトの時間に着き、制服に着替えホールに出た。仕事をしていると同じ学校でBクラスの長道と数人の男が入店して来た。
学校で見知った人物は長道しかおらず、その他は他校の生徒だろうか見たことがない人だらけだった。
「あいつが長道が言ってた無能力者か?」
俺の事を噂していたのか、こっちを見て笑っている。俺が在籍している学園で俺の無能力は有名な方だが、他校の生徒は無能力者がこの島いることは知っていても誰が無能力者なのかは知らない。
「無能がこんなところでバイトなんかしてるぜ、無能が使い物になるのかよ」
周りに聞こえるように大きな声で男の一人が罵倒を浴びせてくる。とりあえずこの場は無視することにした。
これ以上の迷惑行為が起きれば対応しなければならないが、少し様子を見ることにした。長道達は許可も取らずテーブルを動かし大きな声で話し始めた。
しばらくすると長道たちのテーブルから注文のベルが鳴る。長道たちの対応はしたくはないが、俺以外のスタッフは他のお客さんの対応をしており、対応できるスタッフが俺しかいなかったため仕方なく長道たちのテーブルに向かった。
「お待たせいたしました。ご注文をお伺いいたします」
テーブルに着くと長道たちの視線が俺に集中する。
「おいおい、無能よこしてどうすんだよ! 別のやつ来させろ」
長道達がイラついた表情になる。
(俺だってお前らの対応なんかしたくねーよ)
なんてことを思ってしまった。
「申し訳ありません。ただいま対応できるスタッフは私しかおりませんので。ご注文をお願いいたします」
俺はバイト先に迷惑をかけるわけにはいかないため長道たちから注文をとることに集中する。
「無能が来ても邪魔なだけなんだよ店員変えろよっ!」
長道連中一人が大きな声を上げ、怒りに任せ椅子を蹴る。椅子は大きな音を立て倒れてしまう。他に来店しているお客さんの視線が一か所に集中する。さすがにバイト先で迷惑になるため、長道たちに注意をした。
「お客様、他のお客様に迷惑になりますのでお静かにしていただけますか、これ以上騒がれるようでしたらガーディアンに通報しなければいけませんので」
エデンにはガーディアンという本島では警察の役目を持った能力者組織がある。
ガーディアンは警察の下部組織として学生を中心とした組織で、学生内のトラブルの解決、能力を行使した犯罪の防止に努めている。
本島のような通常の警察では、特別な力を持った学生には対抗できないため、高ランクの学生を中心にガーディアンは作られ、トラブルの発生を防ぐ抑止力としている。
「ちっ、こんな店出ようぜ気分悪いわ」
ガーディアンという言葉を聞き気分が悪くなったのか長道は店を出て行く。視線を集めていた長道たちの席から徐々に視線は外れいつもどおりの通常営業に建て直した。
「大丈夫? 絡まれてたみたいだけど」
店長が店の奥から出てきて俺のところまで来てくれる。
「店に迷惑かけてすいませんでした」
お店に迷惑がかかったのは間違いなかったので俺は店長に頭を下げ定時まで仕事をした。
どうもたぬきいぬです。
沢山の方々に無能力者の英雄譚を読んでいただき、評価までいただけることが出来ました。
初回投稿から考えればこんなに見てもらえるとは思っても見なかったです。
これからの話も見ていただけるよう出来る限り投稿させていただきます。
これからもよろしくお願いします。
話数を少しまとめさせていただきました。
読みやすくなったと思いますのでご愛読よろしくお願いします。