第三話 生存者
雪菜は第一位階にアクセスした。身体能力は跳ね上がり俺の手を引き凄い勢いで走り出す。俺は雪菜について行く事で精一杯だがついていけないほどではない。とは言っても俺が全力で走っても雪菜が手を引いてくれているからついていけている。
数分と森の中を走る、全力で走っている分体力がだいぶ減ってきた。まだ雪菜は止まる気配はない、何より今何処に向かっているのかもわからない。
体力も限界に近づいた頃、雪菜は自分の耳元に手を当てしゃべり出した。
「もう直ぐそっち着きそうなんだけど、私の周りに反応ってあるかな?」
雪菜は俺に聞こえるか聞こえないかくらいの大きさの声で喋る。走りながらで風が声を遮って雪菜の声が充分に聞き取れなかた。よく見ると雪菜の耳にはイヤホンの様な物がはめられていた。多分アレで会話していたのだろう。
誰に話しているのか聞こうとしたが走っている状態で満足に声が出せなかった。
「ならもう拠点に戻っても大丈夫かな?」
「ならもう戻るね」
雪菜が誰かとの会話を終わらせる。それから数分走り行き止まりの高い崖までたどり着く。
「ゴメンね随分走らせちゃって」
雪菜は足を止めて俺の方を向く。
「ここが目的の場所、そしてこの下に私たちの拠点があるの」
崖には小さな洞窟がありその中に入る。少し奥に進むと地下へ続く階段があった。その階段を下るとそこには扉があり雪菜はその扉を開ける。扉の先には下駄箱の様な光景がそこにはあった。
(まるで学園みたいだな)
中は窓が無い学園の廊下、地下だからだろうか窓の向こうは何も見えない。ただ真っ暗になっている。
「ただいま戻ったよ」
「おう、お帰り」
「「「「お帰り」」」
そこにいたのは多くの学生たち。
「生存者か、すげーな柊木さん」
「これで三十人目の生存者だな」
「怪我は無いか?」
生存者の俺の怪我を気にする声と雪菜の成果を喜ぶ者が多くいる。
「怪我は大丈夫、てかここは何なんだ? それよりあの黒いの何なんだ?」
俺は近くにいた男に話しかける。俺がこの世界に来て一番知りたかった事。道長の仲間を殺し砂に変えたあの化け物の事を。
「その話なら俺がするぜ、みんなも生存者がいた事に喜ぶのは良いが、色々と説明するから挨拶はちと待っててくれ」
奥の扉から一人の男が現れた。俺と同じくらいの身長で茶色の髪をした男。
「雪菜も一緒に来てくれ、知り合いならその方が早いだろ?」
「わかったよ」
「ならこっちに入ってくれ」
男は部屋に入りそれに雪菜が続く、俺もその後ろに続く。部屋には室名札が掛けられており、そこには校長室と書かれていた。
「校長室?」
「そっ校長室、とりあえず座ってくれ」
答えたのは茶髪の男、茶髪の男は校長室の椅子に座る。そして俺と雪菜も部屋にある椅子に座る。
「先に自己紹介しようか、俺の名前は橘蓮、一応生存者たちのリーダーをさせてもらってる」
茶髪の男は蓮というらしい、リーダーにしてはお堅いとういことはなく雰囲気は柔らかい。
「俺は高坂集、んで色々聞きたい事があるんだけど」
「聞きたいことはあの黒い化物の事と事世界のことでいいか?」
蓮は俺が聞きたいことを言う前に聞きたいことがわかっていたみたいだった。
「っま、だいたいここに来たやつの最初に聞くことなんてそれくらいだしな」
「そう言うことか、んで最初にこの世界のことを教えてくれ」
俺はこの世界の事を先に知りたかった。俺が電車に乗った瞬間に社内ではなく、森の中にいた。そんな事普通ではありえない。
「わかる範囲説明する、博士来てくれ」
校長室に隣接している部屋の扉が開く、そして中から眼鏡をかけ白衣を着た、髪の長い女の子が現れた。
「博士と呼ぶなと言っている」
博士と呼ばれた女の子は、蓮に近づくなり蓮の頭を思い切り殴る。
「いって〜」
蓮は頭を痛そうに抱える。女の子の拳とは思えない音が聞こえた。
「さてと、いくつか説明を始めるとしようか。まず自己紹介といこうか、私の名前は霧島 葉風」
「ここでは博士って呼ばれてる」
蓮が霧島の自己紹介の途中でチャチャを入れる。
「説明の前に用事を思い出したから少し待っててくれるかな、リーダーちょっとこっちに来てくれるかな?」
葉風さんは頭に怒りマークが浮かび上がりそうなはど怒っていた。顔は普通だが内側から溢れ出る怒りが伝わってくる。




