第六十四話 失った時
「大丈夫か集?」
「集様は……大丈夫そうですね、雪菜様も無事……ではなさそうですね」
風音が雪菜の方を見た瞬間一瞬で表情が変化した。怒りの表情に変わり近くにいた男を蹴り飛ばす。そして数秒もしないうちに道長の仲間連中は全員倒された。
「雪菜様は無事ですか?」
「何とか最悪は防げたけど、少し服を破られた」
風音は雪菜の様子を見てそれを察した。
「とりあえずガーディアンに通報しとこう、流石に許されて良いことじゃない」
日向はデバイスでガーディアンに通報した。それから数分でガーディアンは到着しその場を収めてくれた。
俺達は事情聴取をされ全てを説明した。雪菜が道長達に襲われたこと、能力の使用外行使、道長達が侵した罪は多分もうこの島にはいられなくなるほどの大罪を犯した。そして事情徴収が終わり、雪菜はガーディアンに任せ俺と日向と風音は自宅に戻った。
「何なんだよ、戻ってみれば道長達はやられてるしバカ強い能力者がいるし何なんだよいったい」
道長の仲間の一人は暗がりの道を走る、誰もいない道を身が夢中で。男が真也を追いかけ戻った頃には全てが終わっていた。日向と風音が合流し道長の仲間は全員倒されていた。
「鬼ごっこはもう終わりか?」
どこからか男の声が聞こえ道長の仲間は立ち止まる。暗がりの中から一人の男が現れた。現れたのは渡邊 真也。
「テメーさっきまで逃げてた癖に何今更出てきてんだ」
「鬼ごっこの続きをしにきただけさ、お前達がいつまでも捕まえられないから俺が鬼を変わっただけ」
「今は鬼ごっこなんてしてる場合じゃないんだよ!!」
道長の仲間は真也に背を向け逃げ出した。
「今度は俺が鬼の番だ」
真也がニヤリと笑う。
その瞬間、道長の仲間は小さな悲鳴を上げ暗闇の中に消えた。
「さてと、後はガーディアンに任せますか」
それから数日、雪菜はガーディアンの元で療養していた。道長が起こした問題はガーディアン内で処理され、道長とその他の連中は島外処分になったらしい。問題は公にされず、内内で処理された。
俺は大した怪我も無く次の日から普段通り学園に登校した。学園ではいつもの日向や真也と話した。だが未だに雪菜は学園に来る事はなかった。道長が島外処分を受けたことによりAクラスまで行くことに苦を感じなくなった。
だが数日Aクラスまで雪菜の様子を見に行くも、雪菜は学園に現れる事はなかった。そして雪菜の失踪届けはその二週間後にエデンに申請されることになった。
「雪菜が居なくなるなんて」
「どうなっているのですか?」
「柊木さんが失踪とかどうなてんだよ、おい集聞いてんのかよ」
俺の耳には何も聞こえていなかった。
ここ数ヶ月で学生の失踪事件が多発していた、本島とエデン両方で学生が失踪していた。それも能力者だけ。それでも俺の周りで友達が失踪したなんて話は一度も聞かなかったから、心のどこかで安心していた。だが現実にそれは起きた、自分の周りは大丈夫だと、関係ない事だと思っていた。
「雪菜……」
俺は雪菜の名前を呟くことしかできなかった、ただ守りたいと思った存在を一方的に奪われた。どうしようもないほど俺は俺の無力差に打ちひしがれていた。
(無能力者なんて関係なかった、俺には何もできない……)
学園の今日の授業が終わり俺は自宅へと帰る。ただただ歩く、頭の中を空にして、何も考えたくないとそう感じるほどに。
自宅につきベットに倒れ込む、体の疲れがあるわけじゃない、ただただ眠りたかった。次の朝起きたらいつも通りに学校に行っていつも通りに授業をうける。そして放課後になったら雪菜に会いに行く。
そんなことすらもう叶わない。失踪した人は誰一人見つかっていない。だから奇跡が起きない限り雪菜は見つからない。
(起きてくれよ奇跡……)
そんな奇跡起きないことなんてわかってる、だけどその奇跡が起きる事を信じるしかなかった。
そして俺は眠りについた。
朝起きて、いつも通り学園に向かう、そしていつも通り電車に乗りこむ瞬間に瞬きをした。その瞬間俺が瞬きをする前まで見ていた景色は目蓋を開いた後の景色とは全く別物だった。




