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クロッシングワールド  作者: たぬきいぬ
第一章     序章
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第六十話    これからのこと

「あたしは日向に挑んできてもらいたいけどな」


 日向は笑いながらその場でシャドーをする。勢いのあるシャドーをするがその拳には少しの寂しさがこもっている気がした。


「まあアイツに限ってはそれはないだろうけどな、お前らがこの学園のワンツーになってくれれば俺たちもやり易くなるってもんだぜ」


「俺たちってなんだよ、俺は何もするつもり無いけど」


「いやいや集だって今や無能力者で第二位階の能力者を倒した伝説の人だぜ? 擬似アーツが有能だったにしても第二位階を支える能力者の強さは能力者なら誰だって知ってる事だぞ?」


 このエデンで生活する学生たちは皆優秀な能力者たちばかりだ、だけどその中でも第二位階になれる能力者は3割ほどしかいない。それほどまでに限られた能力者しか第二位階には至れないのだ。それほどまでに第二位階の門は固く閉ざされている。


「伝説の人は言い過ぎだろ、奇跡的に勝てただけだし、何より雪菜がいてくれたから俺は勝つ事ができたんだしな」


 雪菜の力無しでは俺はただ力を使いすぎて倒れてしまうだけだっただろう。Dランクで極少ない第一位階が使える能力者、そして第二位階の能力者とほぼ互角に戦える戦闘センス。二年で名前の知らない人がいないほどの有名人。


(俺はそんな人と模擬試合に出てたんだもんな)


「おーい皆席につけ授業始めるぞ〜」


 教室に担任の三枝が声をかける。そして今日の授業が終わりそれぞれが下校して行く。


「そろそろ帰るかな」


「そういえばあれから雪菜さんに会ってるのか?」


 真也が突然俺に声をかけてきた。


「入院中はよくお見舞いに来てくれてたぞ、今日はまだ話してないけど」


 今日はコネクトでも雪菜に連絡は取っていなかった、自分から女の子に何も無いのに連絡するのは少し恥ずかしいと感じてしまう。


「模擬試合が終わってからだと何か目的もないのに連絡できなくてさ」


「お前は中学生男子か!!」


 真也に突っ込まれてしまう。


「もう高校生だぜ? 好きな女の子にくらい何も無くても連絡くらい取れろよ!!」


 真也は急に声が大きくなる。


「いや、てか前提から間違ってるからね? 俺別に雪菜の事好きなんて一言も言ってないからね?」


「おいおいまた出たよ中学生男子、そんなことくらい認めちまえよ」


「認めちまえよ〜」


 日向がチャチャを入れてきた。またいつの間にか俺たちが話している内容を聞いて会話に入ってきた。


「うるさいぞ〜ちっさいの、まだ中学生なのにこんなとこに来ちゃダメでしょ」


 俺は日向の首根っこを掴む。


「おい誰がちっさいのだ! 誰が中学生だ!」


 日向は俺が掴んでいる首根っこの手を掴み、力を入れる、そして手が燃え上がる。


「熱いって! ゴメン悪かった、俺が悪かった!!」


 俺は日向の首根っこを離し、日向も俺の手を話す。


「わかればよろしい、で? 雪菜の事好きなんだろ? だったら告っちまえよ」


「お前人の話聞いてた? 俺好きなんて一言も言ってないよね?」


 会話がループする、こんな流れをダラダラと続けた。


「まあいいや、その話はまた今度、俺用事あるから先行くわ」


「じゃあな」


「また明日〜」


 真也はカバンを持ち教室から出ていく。俺と日向はそれを見送る。


「今日は雪菜に会いに行かないん?」


 日向はまた雪菜の話を持ち出した。


「からかうとかじゃ無くて、これからのこと話したのかなって思って」


「これからのことね……」


 俺の中で遠ざけていた現実、雪菜と掲げたTOE優勝、俺は今回の模擬試合で分かった。グラトニー無しでは俺は雪菜と共に戦う事ができない。頭では何と無く分かっていたことだったけど実践を通じて確信に変わった。


「日向はどう思う?」


「どおって?」


「俺が雪菜のパートナーでいる事をさ、雪菜ならすぐに日向みたいに第二位階を使えるようになるはずだ。 だけど俺はグラトニーを失ってただの擬似アーツじゃまともに戦えない、そんな俺が雪菜と一緒にTOEを勝ち抜くなんてできると思うか?」


 俺が逃げていた現実、模擬試合という小さな枠組みの中で勝利を挙げ喜んでいた自分、だがそんな現実はグラトニーが砕けた瞬間に俺の小さな可能性もバラバラに砕け散った。


「ゼロじゃないと思う……、だけど雪菜と話し合わなきゃ先には進めないぞ、頑張れ集お前ならできる」


 日向は俺の背中に周り背中を叩く、痛いくらい勢いの乗った手は俺の背中にあたり大きな音を鳴らす。


「じゃあ俺も行ってくるよ」


「行ってこい集」


 俺は教室を出て雪菜がいるであろうAクラスに向かった。

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