第五十七話 復讐のきっかけ
「「集!!」」
私と日向は心配そうな顔で集に呼びかける、集は体力を使い切り眠ってしまった。
「無茶しすぎなんだって」
男の子は集の脇を肩でささえる。この男の子とは私は初めて会話した。名前は真也くんというらしい。
「これで何回目ですか集様は」
風音も集の反対側の脇を肩で支える。
「とりあえず保健室運ぶか」
「そうですね、重いですしさっさと下ろしたいです」
真也くんと風音はスタスタと先を歩いて行く。
「あの二人の集の扱いっていつもああなの?」
私は日向に話しかける。
「いつもあんな感じだけど、今回はチョット違うかな」
「何が違うの?」
「風音が私の許可を取らずに先を歩いて行ってるから、相当集の事が心配なんだろうさ」
日向は優しい顔で二人を見送った。普段日向優先の風音が、集を優先し日向を置いて先に行ってしまった。短い間だけど風音のあんな行動は初めて見る。
「寂しい?」
私は冗談半分で日向に聞いてみた。
「寂しさ半分嬉しさ半分てとこかな」
日向は笑いながら話を続けた。
「風音は今まで私中心の生活しかしてこなかったからこんな事無かったから正直驚いてる、でも私はもっとああいう風音でいてほしいと思ってるんだ、私に縛られず自由でいてほしい」
日向は少し辛そうな顔をした、風音が縛られていると言っていたがそこを掘り下げないほうがいいと思った。
「私達も行こっか」
私達は二人の後を追った。
「クソがあああ!!」
道長は病院の一室のベッドの上にいた。予想以上のダメージを受けた道長は、倒された後直ぐに第三学区中央病院へ運ばれた。
普通なら各学園にある保健室へ運ばれる程度で済むはずだったが、道長が集から受けたダメージは予想以上だった。
パリン甲高い音が鳴り響く、道長は病室にある花瓶を自分の能力で壊した、それでも怒りが治らない様子だった。
「アイツら絶対に許さねぇぇ!」
道長が病室にあるテレビに自分の能力をぶつけようとしたその時、病室にノックの音が鳴り響く。
「誰だ!」
道長は病室の扉に視線を向け、ノックの主を確かめる。
「アンタにいい話がある」
扉は少しだけ開かれ、扉の直ぐ近くに声の主は何かを落とした。女性ではない男の声。
「何だこれは」
道長が落ちたものに視線を向ける。
「粉?」
透明な袋に入った粉を道長はベッドの上から降り拾い上げる。
「その粉は能力を一時的に使用できなくする薬さ、それと睡眠作用がある。五分としないうちに眠気が襲うだろう」
「これを俺に渡しす目的は何だ」
「お前が必要としていると思ったからさ、復讐したい相手がいるんだろ? 滅茶苦茶にしたい相手がいるんだろ? それを使えば簡単に叶えられる」
道長の今の状態を理解していた。道長は今、集と雪菜に復讐することで頭がいっぱいになっていた。
自分よりも格下に敗北し、そして何よりこのエデン最弱の集に負けたとなれば怒りが治らないわけがない。
「その粉を使いたい相手の前で破裂させろ、そうすればその瞬間周りにいた人間は能力が使えなくなる、間違えても自分の近くで使用するんじゃないぞ、お前にはその能力があるからな、簡単だろ?」
扉越しの男は少しニヤついた声を出した。その声と自分の事を知っている様な事をいう扉の主を確認しようと扉の向こうを確認するが、そこには誰もいなかった。
「まあ誰だっていい、アイツの話が本当ならコイツは使える」
さっきの男話が本当なら道長の復讐計画は大幅に進展する。
ニヤリと口元をニヤつかせ道長は病室を後にした。




