第五十五話 覚醒
道長の攻撃を受けてしまい、無の世界でダメージを受けた俺は地面に倒れたまま動けないでいた。
(雪菜が戦ってんのに何やってんだ俺は!!)
体を動かしたくてもダメージと疲労で体がまともに動かない。しかも手元にグラトニーは無く少し先の地面に突き刺さっている。
(グラトニーまで辿り着ければ!!)
俺はかろうじて動く腕でグラトニーまで地面を這う。
この会場の人はほぼ全員雪菜の戦いに集中している。俺の動きが道長に知られれば道長は確実に俺を攻撃するだろう。
俺は地面を這いながら、雪菜と道長の戦いからも目を離さない。雪菜が戦ってくれていて、道長に少しの隙さえ出来れば俺も戦いに参戦し、チャンスを作ることができるかもしれない。
だが雪菜と道長の戦いは道長の一方的な攻撃に変わる、同じ能力者でも第二位階の能力者と第一位階の能力者では大きすぎる差がある。この差を一人で埋めることはかなり難しい。
雪菜に使わないでと言われていた無の世界を使い、そして俺はまた約束を破ろうとしていた。グラトニーに意思を送り、自分の精神力を体力に変える。
今、もしできるとしたらそれくらいしか方法がない。グラトニーに喰わせるものが俺にはもうない。どんな事になるのかはわからない、能力の効果が切れたあと当分目覚めないかもしれない。
(でもやるしかない!!)
俺は地面を這いグラトニーに辿り着く、グラトニーを握りしめ、フラフラな体をグラトニーに全体重をかけ、雪菜の方を見た。
俺が一瞬目を話した隙に、状況は一変していた、雪菜が道長に一方的に攻撃されていた。反撃しようとしてもその先を読まれ攻撃を封じられている。
(ふざけんな……)
俺が倒れていたから、俺が弱いから雪菜が傷ついている、こんな状況俺は許さない。
俺はグラトニーの柄を握りしめ、ありったけの意思を送る。そして俺は願う、今の状況を変え道長を倒す力を、雪菜を助ける力が欲しいと。二人で約束したこの試合の勝利を、そして俺は叫んだ。
「俺に力をくれえええええええええええ!!」
ドクンと自分の心臓が大きく脈打った、そして痛いくらいの胸の痛みで体がふらつく。だがその瞬間グラトニーからとてつもない力が送られてきた。
(なんだこれ、こんなの初めてだ)
俺の体に何が起きたのかはわからない、自分が能力者に目覚めた感覚でもない、ただいきなりグラトニーから膨大な力を感じる。
(そんなの関係ない、これで戦える!!)
俺はグラトニーを構える。
その瞬間、雪菜に集中していた観客の目線が俺に集まる。
「おい、あいつ立ち上がったぞ」
「無能力者じゃなかったのかよ」
会場がざわつき始め、それと同時に道長も俺に気がついた。
「オイオイ、まだ立ち上がれんのかよ。 タフなだけが取り柄ってか!?」
道長が雪菜への攻撃を止め、俺に手をむけ能力の岩を作り出し、俺に向け放つ。それと同時に雪菜は攻撃から解放されるがそのまま地面に倒れ込んでしまう。
「遅いって」
俺はボソリと呟いた。道長から放たれた攻撃はスピードもあり当たれば大ダメージを受けることは間違いない、だが今の俺には道長の攻撃が遅く見えた。そして俺は道長の攻撃を難なく斬り裂くことに成功する、それを見た道長が驚いた顔で俺の方を見ていた。
「無能力者のテメーが俺の攻撃を斬り落とすだ? テメー何した?」
道長は顔に血管を浮かび上がらせるほど激怒していた、今まで無能力者と馬鹿にしていた相手が、自分の攻撃を斬り裂いたのだ。プライドの高い道長はそれを許さない。
「何もしてねーよ、ただお前を倒すそう思ってるだけだ!!」
俺は道長にむけ走り出す、それと同時に道長も俺にむけ攻撃をはなつ。
「お前が第二位階の俺を倒すだ? 笑わせてくれるぜ、二度と歯向かえないように痛みで教えてやるよ!!」
また道長は目の前に岩を形成した、だが今回はその数が違う。 さっきの攻撃は一発のみだったが今回は六個こ岩を出現させた。
「ブッ殺してやる」
言葉を発すると同時に道長の攻撃は間隔を開け俺にむけ放たれた。そして道長の攻撃の一発目が俺に当たろうとしていた。だがその攻撃も今の俺には遅く見えた。




