第五十四話 雪菜の闘い
(集のあの指示、まただ……。 集は何か先の未来を見ている気がする)
私は集の指示に驚いていた、そして集と戦った時から違和感を感じていた。戦いの中で成長するタイプの人はたくさん見てきた、だけど集の成長スピードは異常すぎた。
初見の戦いですら相手の攻撃を避け、反撃まで仕掛けるほどの戦闘センス。無能力者が能力者と互角に戦うことすら有り得ないのに、勝つまで至っている。
阿知賀さんも言っていたけど、グラトニーという特殊な擬似アーツを使っていたとしてもあんな風に普通は戦えない。
グラトニーも反動があるにしても戦えて第一位階の能力者、『第二位階の能力者を倒すなんてことあり得ない』と話していた。
そしてもう一つあり得ないことがある、《無の世界》と呼ばれる状態になれること。本当に《無の世界》になれているのかはわからないけど、それに近い状態にまではなっている。
(ホント、驚かされてばかりだな私)
二回戦目でも集に助けられた部分は多かった、他の人とパートナーになっていたら負けていた、集と一緒に戦えたから勝てた。
(だから今回は私が集を助ける番だ!!)
相手は第二位階にアクセスし、放たれる岩は斬れば炸裂する。対して私は第一位階までしか使えない。相手は距離を取ることをやめ接近すらしてくる状態。
(全て避けるしかない)
今現段階で出来ることは全ての攻撃を避け、道長の懐に入り込むこと、近距離戦闘しか出来ない私は距離をとられるほど不利になる。
道長は先ほどと同じ様にまた私に向け走る、私も負けじと道長に向かい走り出す。
道長との距離が徐々に縮まる、まだ道長は攻撃してこない。
「はぁぁぁぁぁあ!!」
道長に攻撃が当たる距離まで接近し、私は刃を振るった。だが道長に刃が触れる直前、道長の足元の地面から岩の刺が現れた。
「クッ!!」
私は右手に持った剣で道長に斬りかかっていたが、地面から現れた岩の刺を左手に持った剣も使い防いだ。だが攻撃範囲が広く私は岩の刺でダメージを受けてしまう。
「舐めすぎなんだよテメーわ!!」
道長が右手を真横向けると手の先から岩の塊が現れる。そして私に向け腕を振るうと岩が私に向け迫ってくる。
(この攻撃は防げない!)
ドンと鈍い音を上げ、左腕に直撃してしまった。そしてそのまま私は吹き飛ばされてしまい地面を転がる。転がりながらも地面を手で弾き体勢を立て直しながら地面を滑る。
だが目線を道長に戻した瞬間、地面から岩が飛び出し私にまた直撃する。
「カハッッ」
ガードも出来ず攻撃をモロに喰らう、そして道長は計算していたかのように次々と道長の攻撃が私を襲う。
私はガードすら出来ずひたすらに道長の攻撃を受けることしかできない。倒れる事すら出来ないほど、道長の連続攻撃は続く。
「おいおい、あれはひでーぜ」
「やりすぎじゃないかな?」
観客席からそんな声が出るほど会場はざわつく。さっきまでの集の戦いで起きたざわつきではなく、戸惑いのざわつきだ。
(ダメ、私もこれ以上もたない)
私自身も徐々に意識が遠のく。この試合は相手の降参か、意識を失ったと判断されれば終了になるが、今の状態のままではどちらの判定も出来ない。
このままひたすらに道長の攻撃を喰らい続けるしことしかできないでいた。
「さっきまでの威勢はどうしたよ、あれだけ騒がせといてこの程度かAクラスな柊さんよっ!!」
道長の攻撃に激しさが増す、ほぼ空中で滅多打ちにされ、この試合の勝敗が近づくのを感じる。
(負けたくない……負けたくない……負けたくない……)
心はこの試合で必ず勝ちたいと言う気持ちが膨れ上がる、だが体は道長の攻撃を受け悲鳴を上げる。能力者の攻撃で精神が攻撃され、闘いたくても意識が遠のく。
(集と約束したのに……絶対に勝とうねって……約束したのに……)
遠のく意識の中、また会場がざわついた。今度は驚きの声、さっきみたいな戸惑いのざわつきではない。
そして私の視界の端にそれは見えた。
(集……)




