第五十三話 暴食VS三槍
樋口の槍のアーツが光輝く、右足を後ろに引き少しのタメを作った。
(この隙に攻撃のチャンスなのは間違いない、けど仕掛けたらやられる!)
俺は樋口の心技のタメを攻撃を仕掛けるチャンスだと思ったが攻めずに俺は樋口の心技に備えた。そして樋口が心技 《三槍》を繰り出した。
真っ直ぐ俺に樋口の槍のアーツが向かってくる。俺はグラトニーで樋口の心技を防ぐ、だが心技は想像以上の威力でグラトニーが軽く弾かれる。
(なんて重さだよ!!)
樋口の心技に怯んでしまった、だが樋口の心技はまだ終わらない、俺が怯んでいる隙に二撃目の攻撃が俺に放たれようとしていた。この二撃目はもう避けられない、何もしなければ確実に俺に当たる。二撃目が繰り出される瞬間に分かった。
二撃目の槍が俺の顔に向け放たれる直前に俺は首を傾ける。そして樋口は俺の予想通り二撃目を俺の顔むけて放った。
「は?」
樋口は驚いた顔をしていた、そして俺も驚いていた。俺は樋口の心技がどこに向け放たれるか分かっていたからだ。
(この感覚、初めて雪菜と戦った時と似てる)
初めて雪菜と戦ったあの日、普通では能力者の攻撃をどうすることもできないはずが、俺は攻撃を防ぎ避けられたことがあった。何故だかわからないが感覚で防ぎ、避けることができた。
そして今その時の感覚になっている。樋口の二撃目を避けた俺は樋口から視線を離さない。普通なら一瞬でも瞬きをしてしまうタイミングで俺は瞬きせず樋口を見続けた。樋口の三撃目が放たれる瞬間に集中する。樋口が次にどこに向けて槍を放つのか俺は何となく分かっている、樋口が二撃目を避けられ次は確実に当てるという意思も俺に伝わってくる。樋口の視線、それを逃がさず次に樋口が攻撃してくる場所を予想し、自分の確信にする。
「終わりだーーーー!!」
樋口が三撃目の心技を放った、俺はその瞬間《無の世界》に入る。自分を中心に世界は色と音を無くす。スローモーションで動く樋口を俺は呼吸を合わし体全体で心技を避ける。ほぼ呼吸をする感覚で 放たれた攻撃の速さ、それをほとんどかわされた樋口は驚いた顔をしていた。
連日続く戦いで体はほぼ限界を迎えている、だからこの一瞬しか使えない。驚いている樋口に向けグラトニーで斬りかかる、俺に避けられる事を想像していなかった樋口は次の行動を考えていなかった。だから俺の攻撃は想像よりもスムーズに樋口に命中した。体を斬り裂き樋口にダメージを与える、アーツで斬り裂いても傷や痕は残らない、あるのは痛みだけ。体を真っ二つに斬り裂りさかれた樋口は痛みで怯んでいる。
「まだだ!!」
俺はすかさずグラトニーで樋口に斬りかかる、二撃三撃と連撃を重ね樋口の体力を削る。
「何やられてんだ樋口!!」
道長が岩を形成し俺に向け飛ばす、雪菜と戦いながら道長は俺に向け岩を放つがそれを雪菜が切り落とす。
「あなたの相手は私!!」
雪菜は岩を斬り落としそのまま道長に向け攻撃を始めた。道長は中長距離タイプの能力者なため、雪菜と距離をとっている。雪菜は道長との距離を縮めるために岩を斬り落としては距離を積めようとしている。道長はそんな雪菜に距離を縮めるられまいと岩を放と距離をとっている。そんな攻防を続けている。
「もういいやあいつはもういらねえ」
道長は仲間の樋口に向け岩を放った。雪菜は樋口に向け放たれた岩を切り落とすことができなかった。 俺に放たれた岩なら斬り落としていただろうが、それが樋口に放たれたと分かって反応に遅れた。
「集くん避けて!!」
そして俺も無の世界で音が聞こえない状態になっていたため雪菜の声が届かなかった。俺は斬ることに集中していたため雪菜の声は俺に届かなかった。
「道長テメー!!」
道長の岩は樋口に直撃し、俺も道長の攻撃に被弾した。
「集くん!!」
道長の攻撃を受けたと同時に《無の世界》が切れ雪菜の声が聞こえた。俺は地面に打ち付けられる、樋口は道長の攻撃を直接受けたため地面に寝たまま立ち上がらない。
そして俺も《無の世界》が切れ体に痛みが走る、身体中の痛覚が悲鳴を上げ立ち上がれなくなる。道長の攻撃は被弾程度でもかなりのダメージを受けてしまった。
「邪魔者は居なくなった、さっ楽しもうぜ柊!! 《第二位階アクセス》」
道長は第二位階にアクセスし、さっきとは打って変わって雪菜に向け走り出す。そして手を前に突き出し数発の岩の塊を放つ、雪菜も道長に向け走り道長から放たれる岩の塊を全て斬り落とそうとする。
そして雪菜の剣が道長の放った岩に当たる瞬、嫌な予感を感じ俺は地面に倒れながら雪菜に向け叫んだ。
「よせ雪菜! その攻撃を斬るな!」
『斬るな』という言葉が直ぐに出た、普通ならあの攻撃は斬り落とすのが普通だ。雪菜の技術的にも斬り落とす方が的確だ。だが俺は直感で雪菜にそう指示した。そして雪菜は斬らずに剣でガードした。
そして雪菜に攻撃が当たった瞬間道長が放った岩の塊が炸裂した、雪菜は剣で身を守るが飛び散った岩の破片が雪菜の体に当たる。
「くっ!!」
雪菜はガードしていたため大したダメージにはならなかったが、そのまま斬りかかっていたらどうなっていたかわからない。
「テメー何故わかった!!」
道長は驚き怒っていた、俺の予想にもしなかった指示で攻撃が上手く通らなかった、ある意味道長の第二位階の能力は初見で防がれたのだ。
俺は地面に倒れたまま動けず、ただ雪菜と道長の戦いを見ていることしか出来ない。
(ごめん雪菜しばらく動けそうにない)
俺は雪菜に心の中で謝ることしか出来なかった。




