第四十八話 二つの力
「私の憶測なのですが、原因は二つありますぞ、一つは無の世界に入り方は知っていても、無の世界が使える体が出来ていないこと、そしてもう一つの原因がグラトニーですぞ」
「グラトニーが?」
「そうですぞ、グラトニーは心力の無い集様の体力を喰らい力を与えています。無の世界と
グラトニーの二つから同時に体力を奪われている集様は、二つ同時に効果が切れた途端、反動で体が動けなくなっているのでは無いでしょうか」
無の世界とグラトニーの二つから体力を奪われている。だがそれくらいなければ俺は戦えない。第二位階を使う能力者と戦うには二つを使いこなせなければいけない。
「もう一つ聞いていいか?」
「なんですか?」
聞いておかなければならない大切なこと。これから先重要なこと。
「俺は二つを使いこなせると思うか?」
阿知賀さんの顔が曇る。
「二つを使いこなせるとは到底思えません……。 正直に言いますがグラトニー自体オーバースペックの擬似アーツですぞ、それと〈無の世界〉を使うとなれば反動は避けられないと思いますぞ」
「そうか……」
「ですが、反動を減らすことは出来るはずですぞ、そこは集殿次第ですが」
「それだけ聞ければ安心できるよ、ありがとう阿知賀さん」
俺はベッドから降り立ち上がる。さっきまでは動かすことも出来なかった体もグラトニーの反動は2回目なだけあって回復も早い。
酷いダメージでも慣れはくる。疲れた体は雪菜と阿知賀さんと話している間に体力は徐々に回復し、動ける様にまでなった。
この後練習する事はできないが、家に帰る程度のことは出来る。
「それじゃあ俺は帰るよ、ある程度は回復できたし」
「私も帰りますぞ、明日は健闘をお祈りしておりますぞ」
阿知賀さんも立ち上がりそのまま保健室を後にした。俺も保健室を出て校門に向かう。
校門に着く直前、校門付近で女の子が立っていた。
(あの女の子は駅で見た)
雪菜と会う直前駅で見かけた女の子、小学生くらいの女の子は校門から俺の方を見ている。
俺は女の子から目を離しただ歩いていく。また女の子を二度見したとき目があった。そして女の子はニコリと笑い俺に話しかけた。
「まだだよね?」
『まだだよね?』どう言う意味だ? 俺は女の子に『まだだよね』の意味を聞き返そうとしたその時、強い風が吹いた。
強い風が吹き俺は腕で風を塞いだ。数秒の間風は吹く、そして吹き止み目を開く。だがそこにはさっきの女の子はいなかった。
「あれ、どこいった?」
声に出てしまうほど拍子抜けした。数秒の間吹いた程度の風を腕で塞いでいる間に、女の子はいなくなった、いや居なくなったと言うより消えたと言った方がしっくりくる。
校門から外に出て周りを見回すが人一人いなかった。
(まいっか)
俺はそのまま家まで歩き出した。
そしてこの時の俺はまだ気付いていなかった。大切な明日の試合、対戦相手を確認せず雪菜と別れてしまったことを。




