第四十四話 第二試合
会場は自動修復が追いつかず、能力者の手を借りての修復が始まった。
阿知賀さんのように何かを造る能力者もいれば、こうして何かを治すことのできる能力者もいるのだ。
「さっきの風音の心技、凄かったな」
「そうだね、凄かったね」
俺は隣を歩いている雪菜に話しかけた。だが先程から雪菜は少し暗い雰囲気を出している。
声からも明るさが消え今は落ち込んでいるような、そんなかんじだった。
「俺たちの次の試合はもう直ぐだし準備しとこうか」
俺と雪菜は今戦っている試合の次の試合だ。そろそろ控室に入って準備しなければならない。
俺は雪菜を誘導するように控え室に向かった。
控え室のスピーカーから試合終了の報告が聞こえた。
「雪菜は大丈夫か?」
俺は心配になり雪菜に声をかけた。
「大丈夫だよ」
雪菜の反応は薄い。さっきの風音と日向の試合が相当響いたのだろう。自分の実力ではまだ届かないと、ハッキリとあの場で知らしめられたのだからしょうがないと思うが。
「それでは第9試合の参加者は準備してください」
スピーカーから音声が流れ俺と雪菜は会場に向かった。会場に向かう間も雪菜は何も話さなかった。
そして会場の中に入り、試合開始の合図を待つ。
対戦相手はもう会場に入っていた。二人とも男の能力者で細めの男と体格の良い筋肉質の男だ。
「試合開始」
試合開始の合図がなった途端、雪菜は一直線に相手に向かっていった。
「待て雪菜!」
俺の声は届かない、雪菜には俺の声が聞こえていないみたいだ。
相手の能力がわからない状態で、第一位階も使わず飛び出した。
「おいおい第一位階も使わずに突っ込んでくるか普通? 第一位階アクセス!」
「第一位階アクセス」
一人は周りに水の塊を浮かび上がらせ、一人は斧のアーツを出現させた。
対戦相手は雪菜が突っ込んで来ている間に第一位階を使う。
(これはまずいぞ)
このまま雪菜が突っ込めば、いくら雪菜が強いと言っても、序列はそこまで変わらない。
二人に同時に攻撃されれば雪菜であってもタダでは済まない。
「来いグラトニー!!」
俺はグラトニーを出現させ、相手に向け走り出す。
「無能力者だけどアイツは一回戦一人倒してる。気を抜くなよ」
「わかってるよ! まずは今突っ込んできてるやつだな」
水の能力者の周りに浮かび上がっている水の塊を雪菜の方に向け放った。
向かってくる水の塊を雪菜は難なく切り裂いた。
「まあ普通切り裂くよね」
水の能力者は口元をニヤリとさせ、そして斧の能力者は大きく斧を構えた。
(あんな隙のある構えじゃ雪菜には当たらないぞ)
俺は内心でそんことを考えていたが、それと逆の状況は一瞬で訪れた。
雪菜が斧の能力者に斬りかかる瞬間、雪菜の動きが遅くなった。
「服ってさ水を吸っちゃうんだよね」
雪菜の服に水が染み込んでおり、水の能力者はその服に付着した水をコントロールしていた。
動きの遅くなった雪菜を斧の能力者が容赦なく斬りかかる。
「いくらなんでも舐めすぎだぜ」
斧の能力者の斧は雪菜の体に当たる瞬間、雪菜がなんとか自分の双剣で防ぐが、第一位階にもなっていない雪菜は会場の壁まで吹き飛び叩きつけられた。
「雪菜!」
雪菜は壁に激しく叩きつけられぐったりしている。
「まだ終わらないけどね」
水の能力者が右の人差し指をクイっと曲げた瞬間ぐったりしていた雪菜が、途端に斧の能力者に向け飛んでいく。
(まずいこのままだと雪菜がやられる!)
俺は全力で走り、水の能力者に斬りかかる。
「君のことを忘れてたよ」
水の能力者は自身の前に水の壁を作る。水の能力者が俺に集中したことにより、雪菜の動きが止まる。
(同時に能力は使えないってことか)
俺は水の壁を斬らずに、水の能力者に向かっていた足を斧の能力者に向け、走り出す。
「俺から先に倒しにくるとは考えたな……。 だけどな」
俺は斧の能力者に斬りかかる、だが相手も同時に斧で俺に斬りかかる。
俺のグラトニーと斧がぶつかる。お互いが力を込め競り合いになる。
「無能力者がやるじゃねーか。こいつは俺に任せろ、終わるまでちとまってな」
斧の能力者は仲間に声をかけ、またさらに力を込める。
「何がなんでも勝たなきゃなんねーんだ」
俺もさらに力を込める。グラトニーな体力を吸われない程度に堪えて見せた。だが斧の能力者はそれだけでは終わらなかった。
「ならお前に俺の力を見せてやろう、あっちの女は当分は起きないだろうしな」
斧の能力者の雰囲気が変わる。
(第二位階が来る!!)
「第二位階アクセス!!」
斧の能力者の力が格段に上がった。
「クッソ!!」
斧の能力者は第二位階で自身の身体能力を大幅に上昇させた。
「お前もあっちで寝てな」
斧の能力者はさらに力を込め小野を振り切る。俺は堪えきれなくなり斧の勢いで吹き飛ばされる。
体は宙を舞うほどに飛ばされてしまう。空中で体勢を立て直し地面に叩きつけられずに済んだ。
「あれでよく体勢を立て直せたな、お前本当に無能力者か?」




