第四十三話 暴風の一撃
日向は体に傷一つ無かった。
「ですがお嬢様を傷つけようとしたことには変わりありません、貴方たちには少し痛い思いをしてもらいます」
風音の周りに激しい風が巻き起こる。
「なんだよその力は!!」
「何もしないとやられるよ」
蔦使いは風音に向け手をかざす、風音のいる地面が揺れ蔦が風音の周りに現れる。
「私にそんな玩具が効くとでもお思いですか?」
風音が脚で地面を叩くと風音に絡み付こうとしていた蔦は風音に纏った風で吹き飛ばされる。
「そんな!! 私の蔦がこんなあっさり」
「そりゃそうさ、風音とあんたじゃ実力が違いすぎる」
日向は第二位階を解除している。アーツをも解除しもう戦う意思を示していない。
「何より風音に第二位階を使わせたらダメだな」
「なに?」
蔦使いの額に汗が浮かび上がる。
そしてもう二人の目線は話していた日向で
はなく、その奥にいる風音を見ていた。
「何だよこの心力は!!」
心力とは能力者が持つ特別な力、心力が高いほど能力者の能力は強いとされている。
「お嬢様を縛り、なおかつ痛めつけようとしたことを後悔しなさい」
風音は上空に高く跳躍した。単純にジャンプするような力加減で跳んだ。だが風に乗り風音は空高く舞い上がる。
訓練場は試合時は天井が開く仕様になっている。普段は分けられている部屋も、試合の時はすべての部屋が一つの部屋になる。
開けた訓練場の天井は近くまで風音は舞い上がり、敵二人に向け片足を向ける。
「貴方は先ほど言いましたね。『当分の間はベッドの上だけどしょうがないよね』と……」
風音の周りにある風が両脚に集まる。
「アンタなんて撃ち落としてやるわよ!! 心技 エクスプロージョンウィップ!!」
爆発の鞭は風音に向け飛んでいく。そして鞭は風音に当たり大きな爆発を起こす。
「私の全力の心技を受けてタダで済む奴なんているわけない」
爆煙は晴風音の姿が見えてきた。
「私からも言わせていただきます。 当分の間はベッドの上で寝ていてください。 心技 エアロブラスト !!」
風音は右膝を少し上げ足を突き出す。その瞬間高く跳んでいた風音が急降下してきた。風は風音の全身を包み真っ直ぐ二人の能力者へと向かっていく。
「心技 フレアガーデン!!」
蔦の能力者は風音が心技を使うと同時に、自身も心技を使い自分達を包むように蔦の壁を貼る。風音の心技から自分達を守っている。
「そんな防御じゃ風音の心技は防げないぜ」
日向は二人に向け言葉を放つ。何の構もしていない日向など絶好の的だ。だが日向に攻撃できないでいる。それよりも目の前にいる風音が放とうとしている心技を対応することで精一杯になっている。
そして風音は凄まじい風を纏いながら、フレアガーデンに直撃する。
フレアガーデンに直撃した直後、フレアガーデンの蔦と炎は風音の心技の風に全て吹き飛ばされ、そのまま風音は二人に直撃した。
激しい爆風が起こり観客席の壁まで衝撃が伝わってくる。観客席には特殊な透明な壁が張られており、爆発や爆風などの障害はこの特殊な壁で阻まれる。
会場は砂埃が舞い、日向と風音、そして対戦相手も見えなくなっている。
「お嬢様、それでは帰りましょう」
風音の声が聞こえた瞬間、砂煙は風で払われ一瞬にして視界を覆っていた砂煙がなくなった。
「そうだな、まああとは救護班に任せるか」
風音の足元には対戦相手の二人が倒れており、会場の地面は大きな風穴が空いていた。
「勝者 夏希、夏野ペア!」
試合終了の合図で観客全員が歓声を上げた。風音の心技の威力に、今まで観客は口を開けたままただ見ていることしかできなかった。
「あれが風音の第二位階の力……」
雪菜は風音をじっと見ている。あの第二位階と心技は、この模擬試合に参加している参加者なら鳥肌が立つほど恐怖でしかない。
あの心技が自分に直接向けられた時、あれに立ち向かわなければならないからだ。
そして風音は観客席で見ている俺を一瞬で見つけ、こちらを見ている。風音が目で何かを伝えてようとしているがそんなことは一瞬でわかった。
(早くここまで来いってか)
風音との修行で大きく成長出来たと思っていたがまだまだだった。あの二人の実力は異次元だ。俺と雪菜が挑んでも一瞬でやられてしまうだろう。
風音は俺と目があったあと直ぐに目線を日向に戻した。
「お怪我はありませんかお嬢様」
「ないない、あんな奴らにやられるわけないだろ」
日向は風音を連れ会場の外に向かう。
そのご救護班が対戦相手の二人を回収し、会場は風音が開けた風穴を残したままになっていた。




