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クロッシングワールド  作者: たぬきいぬ
第一章     序章
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第四十話  力のコントロール

「集様、体力も時間もない今あなたにできるのは確かなコントロールを身につけることです。私は擬似アーツのコントロールに関しては何もアドバイスは出来ませんが、貴方の攻撃を全て受け評価を出す程度のことはできます」


「なら遠慮なくいかせてもらうけど……。 どうすればコントロール出来ると思う?」


「私には分からない感覚ですが、あの時の集様は全力で剣を振っていました。そうではなく全力で振るわず、かつ力を抜かないか振り方を身につけるべきかと」


「全力で振るわず、かつ力を抜かないか……」


 俺はグラトニーを握り意思を送る。あの時のような強い意志は送らない。だけど深く自分の意思を送る。


「第一位階アクセス」


 風音はアーツを展開する。俺が集中していることに気づき反応してくれた。


「いつでもかかってきてください」


 風音の言葉は俺に届いていた、だけどその言葉に返事はしない。それよりも今はグラトニーに深い意思を送ることに集中する。


 俺がこれから雪菜を守る。ただ隣に立っているだけではダメだ。それ以上の意思を持ちそれを超える。そうでなければ俺は今を変えることなんてできない。


 俺は深く深呼吸をし意思を深く、強くグラトニーと繋げる。


「準備が出来たみたいですね」


 俺は地面を蹴る。風音に向かい走る。ただ相手を斬る、それ以外の思考は余分になるためそれ以外の思考は捨てる。風音と距離をつめグラトニーを振るう。前回のようなデタラメな振りではない、自分の理想の剣捌き、それをイメージし振るう。


 イメージするのはこの第三学区の第一位、剣聖と呼ばれる 新藤 慎一 


 第三学区最強にしてこの学区の長、特別な能力は何も使わずただ斬るのみ。TOE優勝者にして二学区間戦争を止めた人物だ。


 俺は剣聖の剣技をイメージ通りに振るう。 グラトニーは風音を切り裂こうとするが風音も自分のアーツで受け止める。


 脚を高く上げ右足の裏でグラトニーを受け止める。風音は俺の剣を簡単に受け止めた。俺はグラトニーを強く握り深く力を込める。深くつなげた意思はそのままに。


「くっ!!」


 風音が急に受け止めていた脚で剣を押し返した。俺の剣は一瞬風音の脚を離れる、風音はグラトニーを受けきれなくなったのだろう。だがこれだけでは終わらない、風音に一撃入れるため俺は瞬時に風音にもう一度斬りかかる。


 だがそれよりも早く風音は自分の体を回転させ左足で俺の腹部に蹴りを入れる。


「なっ!!」


 俺は後方に吹き飛ばさ地面に叩きつけられ地面を転がる。俺は体勢を立て直しすぐに風音に向かい走り出そうとするが風音はいつのまにか俺との距離を詰め脚を蹴り上げる。俺が握っていたグラトニーは弾かれ空高く飛ばされる。


「ここまでです」


 風音の声で俺は集中していた感覚が途切れる。今まで呼吸していなかったかのように苦しくなる。急に体に疲労が襲いかかり両手を地面につかなければ倒れ込んでしまいそうになる。


「お疲れ様でした、今の戦い方は良かったと思います」


「ほんとっかっ」


 息は切れ返事をするのがやっとなほどに体力を失い、目の前がクラクラする。酸欠に近い状態になっているのだろう。この短時間で俺が嫌いだった学校のマラソンをした気分だ。


「本当です、ですが次もできなければ意味がありません。 ですが今日はこれ以上動くことは出来ないでしょう」


 風音は俺を見下ろし手を差し伸べてくる。普段は日向に隠れてキツイ態度を見せてくる風音だが、今はただ俺に優しさを向けてくる。


 俺は砂がついた手を払い風音の手を取る。風音は力を入れることなく俺を立ち上がらせる。


「まだやれっガハッ」


 俺は風音に向け声を発するが声が途絶えてしまう。体が酸素を欲している今声を出すことすら体が否定している。


「その様子では剣を振ることすらできないでしょう」


 風音は俺の頭に手を置き優しく俺に微笑んだ。


「貴方が先ほど思い描いた思いや感情を忘れなければきっと出来るはずです。 何のために剣を振るのか、何のために勝ちたいのか、その思いは貴方を強くするはずですから」


 風音は俺に背を向け歩き出す。 後ろは振り向かず歩いていく。前を向いたまま俺に別れの言葉を告げる。


「明日は貴方の戦いを楽しみにしています、昨日の集様よりも強くなった集様を見せてください、それでは」


 風音は俺の別れの言葉を聞くこともなく歩いていく。よく見ていた風音の背中、風音が落ち込んでいる時や元気がない時は少し辛そうな背中を見せる。それは一年付き合ってきた友達として何となくわかることだ。


 何故かその後ろ姿は寂しげに、何故か落ち込んでいる時の風音の背中によく似ていた。


 俺はその理由がわからなかった。

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